戦略的課題
ポーランドの核戦略転換:ロシア脅威への対抗がはらむ独自のリスク
高まるロシアの脅威を背景に、ポーランドが核戦力強化に乗り出す中、国際的な安全保障において見過ごされてきたリスクが浮き彫りとなっている。
![2月11日、ワルシャワで開かれた国家安全保障会議に出席するポーランドのカロル・ナヴロツキ大統領。会議ではEUの防衛融資とトランプ氏の「平和委員会」について議論された。[Aleksander Kalka/NurPhoto/AFP通信]](/gc7/images/2026/02/18/54650-afp__20260211__kalka-polandna260211_npcqf__v1__highres__polandnationalsecuritycounci-370_237.webp)
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ワルシャワが核抑止力強化へ大胆にかじを切る中、国際安全保障の隠れた脆弱性が浮き彫りとなり、NATO東方の防衛線に試練をもたらしている。
ポーランドのカロル・ナヴロツキ大統領が、「攻撃的で帝国主義的なロシア」への対抗策として核戦力の追求を訴え、重大な論争を巻き起こしている。
「ポーランドが核プロジェクトに加わることを強く支持している」と、ナヴロツキ大統領は2月15日、ポルサット・ニュースのインタビューで語り、モスクワの脅威に直面する中、「ポーランドの安全保障を強化する」ことになると強調した。
ほとんど報道されていないこの動きは、ロシアの行動が最前線国家に防衛態勢の見直しを迫り、核不拡散の規範を危うくするリスクをはらんでいることを示している。
![ポーランドのカロル・ナヴロツキ大統領が2月11日、ワルシャワで開かれた国家安全保障会議に出席した。会議ではEUの防衛融資とトランプ氏の「平和委員会」について議論された。[Aleksander Kalka/NurPhoto/AFP通信]](/gc7/images/2026/02/18/54649-afp__20260211__kalka-polandna260211_npvib__v1__highres__polandnationalsecuritycounci-370_237.webp)
ナヴロツキ氏の発言は、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中でなされた。隣国ベラルーシへの戦術核兵器配備や、核使用の敷居を下げる戦略方針の改定が進む状況を受けてのものである。
核戦力の評価
ポーランドの核戦力構想は、独自の核インフラを欠くため抑止力をNATO同盟に依存せざるを得ず、道筋に障壁が立ちはだかっている。
専門家の見解では、ワルシャワは産業基盤と計画中の民生用原子炉を活用し、理論的には核兵器開発が可能だが、実現までの期間と費用の面で現実的な障壁が高いという。
「ポーランドのような現代の工業国であれば、[核戦力の]開発は十分に可能だ。ただ、期間については1年で済むという見方もあれば、もっとかかるとの見方もあり、予測には幅がある」と、防衛アナリストのピーター・ロバーツ氏は最近の分析で述べている。
核不拡散条約(NPT)の締約国であるポーランドは、独自核戦力の構築にあたり法的障壁にも直面しており、制裁や外交的孤立を招く恐れもある。
核兵器の維持管理には、主流の議論ではしばしば見過ごされがちな、幾重もの困難が伴っている。
核プログラムには、安全性の確保、警備体制、そして近代化のために莫大な資源が求められる。その課題は、米国のミニットマンIII大陸間弾道ミサイル(ICBM)近代化計画において顕在化しつつも、克服されてきた。
ポーランドの場合、同様の落とし穴が経済を圧迫し、すでにGDP比4〜5%に達する高い防衛費を計上する中、通常戦力への予算配分をさらに逼迫させる恐れがある。
ポーランドの核計画に代わる選択肢として、NATOの核共有プログラムへの参加や、フランスの「核の傘」への連携が挙げられる。核共有プログラムでは、ドイツやイタリアなどが米国製核弾頭を自国領内に配備している。
アンジェイ・ドゥダ前ポーランド大統領は此前、ポーランド領内への米国核兵器配備を主張し、「これにより、米国と北大西洋同盟(NATO)が同国を防衛する意思をより強固なものとする」との見解を示していた。
高まる世界のリスク
ロシアのウクライナ侵攻は、欧州の安定を損なっただけでなく、核兵器をめぐる各国の動きにドミノ効果をもたらし、世界を極めて不安定な状況にしている。 。
ポーランドの動きは防衛目的だが、緊張激化を意図せず招く恐れもある。モスクワは核配備の動きについて、ポーランドが「国家として消滅しかねない」と警告している。
こうしたリスクを抱えつつも、ポーランドの信頼性が同国の主張を後押ししている。
堅調な経済成長で多くの西側諸国を上回り、NATO東翼の防衛において要の役割を果たすワルシャワは、国際的な信頼を勝ち得ている。
GDP比4%超を防衛費に充てるポーランドは、米軍を受け入れ、ウクライナ支援でも先頭に立つことで、欧州の安全保障において「不可欠な新たな柱」としての地位を固めつつある。ワルシャワを拠点とするシンクタンク「東方研究センター」の首席軍事アナリスト、ヤツェク・タロチンスキ氏が1月、トルコのアナドル通信の取材でこう語った。
NATO議会総会は2025年11月の報告書で、「ポーランドは、ロシアが2014年にクリミアを不法に併合して以降、NATOの抑止力体制において先頭に立ち続けてきた」と指摘し、ロシアの脅威に対処する上でポーランドが共通の責務を担っていることを確認した。
しかし、こうした不安定な国際情勢の中で、ポーランドの核配備への野心は、世界秩序の安定における見過ごされがちな亀裂を浮き彫りにしている。