戦略的課題
オーストラリアは、中国とロシアに対する抑止力として「従来とは異なる」手段を導入する必要がある=シンクタンク
報告書によると、中国が、戦争行為とはみなされないサイバー戦争、強制力、破壊活動など、いわゆるグレーゾーン戦術を行使する傾向が強まっている現状から、オーストラリアには従来よりも動的で即応性の高い政策が必要だという。
![2025年3月26日、アバロンで開催されたオーストラリア国際航空ショーでフレアを放つ王立オーストラリア空軍(RAAF)のEA-18Gグラウラー。[William West/AFP]](/gc7/images/2025/10/24/52528-ausjet-370_237.webp)
AFP通信 |
オーストラリアのある有力なシンクタンクによると、同国は過去のゲリラによる反政府活動から学び、中国やロシアなどの脅威に対抗するため「従来とは異なる」政策を採用する必要があるとのことだ。
オーストラリアは、米国・英国との三国間協定であるAUKUSのもと、15年以内に米国から少なくとも3隻のバージニア級潜水艦を取得する。将来的な自国での建造も考慮したうえでの計画だ。
しかしながら、それまでの間、オーストラリアの防衛力に大きな空白が生じるだろうと、超党派のオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が報告書で警告している。同研究所はオーストラリア国防省と米国務省から資金提供を受けている機関だ。
10月15日に発行された報告書には、「オーストラリアが従来より頼りにしてきたいわゆる『強大な友好国』や核の傘は、もはや確実なものではない」との記述がある。
さらに、「オーストラリアには現在の抑止力の空白を埋める選択肢がある。ただ従来の枠組みを超えて模索する必要がある」とも記されている。
ASPIは、中国のような敵対勢力に対するオーストラリアの「力不足」を踏まえつつ、1990年代のチェチェンのロシアに対する反乱のような過去のゲリラ戦争で、小規模な勢力がはるかに強大な敵対勢力に大きな損害を与えられることが示されたと主張している。
グレーゾーン戦術
報告書では、「革新的な概念と非対称能力により紛争前および紛争中に抑止力を発揮できることは、歴史的にも実証されている」と記されている。
また、「抑止力に関するオーストラリアの概念は、中国や、ロシア、北朝鮮、イランなどの独裁政権が現在展開している競争の性質に対応していない」と警鐘を鳴らしている。
ASPIは、オーストラリアに従来よりも動的で即応性の高い政策が求められる根拠として、中国が、戦争行為とはみなされないサイバー戦争、強制力、破壊活動など、いわゆるグレーゾーン戦術を行使する傾向が強まっていることを指摘している。
加えて、ASPIの主張では、オーストラリアは、シンガポールの元首相リー・クアンユー氏による自国についての「毒エビ」という表現や、スイスやバルト三国の「ヤマアラシ」戦略からも学ぶことができるとしている。
ASPIは、広範囲にわたる権限を持ちオーストラリアの情報機関を監督する国家安全保障顧問を再び設置すること、そして新たな政策を推進するために、スパイ活動に関する法律や防衛法を改革することを求めている。
オーストラリアは、最大の貿易相手国でもある中国に対する防衛力を強化するため、急ピッチで軍備増強を進めている。
オーストラリアの計画では、国内総生産(GDP)の2.4%まで国防費を段階的に増やすとしている。しかしこれは、米国が要求する3.5%を大幅に下回る数字だ。