新たな課題
プーチン大統領による戦争の真の代償 ロシアの家庭を直撃
戦場に関するニュースが報じられる一方で、ロシアによる戦争でロシア国内の日常生活が静かに変わりつつある。資源が枯渇し、医療体制がひっ迫し、長期にわたる不安定な状況が深刻化しているのだ。
![2026年2月14日、モスクワのイズマイロヴォ市場の通路を通り抜ける女性。 [Hector Retamal/AFP]](/gc7/images/2026/04/08/55318-afp__20260214__97kc866__v2__highres__russialifestylepeople-370_237.webp)
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軍事費がロシアの国家予算の約40%を占める中で、一般市民がその代償を支払う形となっている。薬局では棚が空になり、物価は高騰し、医療制度は崩壊寸前に追い込まれている。
ウクライナでの戦争は、早々に決着し栄光に満ちたものになるはずだったが、現実は、ロシア国内の日常生活を静かに蝕んでいる。
現在のロシア経済では、軍事機構はフルスロットルで稼働しているが、民間部門は失速しつつある状態だ。インフレ、制裁、そしてロシア国内の衰退の深刻化を報じたこれまでの報道でも、この対照的な動きがうかがえる。
防衛費は、現時点で教育、医療、社会政策の支出を合わせた額を上回る。
![2026年3月19日、モスクワの両替所の前を歩く女性。 [Igor Ivanko/AFP]](/gc7/images/2026/04/08/55317-afp__20260319__a3w67nr__v1__highres__russiaeconomy-370_237.webp)
経済的負担の増大
年金や危機に対するセーフティネットであったロシア国民福祉基金は、2022年を境にその3分の2の資金が使い果たされた。
2025年初頭に記録的な財政赤字を計上したため、増税と支出削減を余儀なくされた。その影響が最も深刻だったのは一般家庭だった。
深刻なのは労働力不足だ。ロシア政府は2030年までに240万人の労働力不足が生じると予測している。
工場や病院で働いていた若い男性たちが報奨金を目的に軍へ入隊したため、民間部門の賃金とインフレ率が上昇した。
2024年に公式発表されたインフレ率は9.5%だったが、多くのロシア人は16%程度と感じている。
バター、卵、輸入品などの生活必需品の価格上昇に、年金や公務員の給与はまったく追いついていない。
移住、死亡、負傷により少なくとも150万人の労働力が失われ、工場の稼働率はわずか81%にとどまっている。
中央アジアからの移民が途絶えたため、企業はインドやスリランカから人材を募集している。
医師、セラピスト、雇用が不足しているため、社会福祉制度はすでに崩壊寸前だが、戦場から戻った退役軍人によってさらなる負担がかかっている。
さらに悪化し続ける医療危機
この悲痛な状況を最も身近に感じられるのは病院や薬局だ。
制裁と予算の転用により、インスリンや抗がん剤などの必須医薬品が慢性的に不足している。
ロシア政府の輸入医薬品への予算は、2023年だけで650億ルーブル削減され、軍事予算に転用された。
2025年末までに、各地の薬局で在庫切れが相次ぎ、患者からの苦情は前年比で19%増加した。
糖尿病患者やがん患者は、長い列に並んで待ったり数百キロ移動したりした末に、在庫がないと告げられる。
医師や看護師は、待遇の良い軍関係の仕事に転職したり、国外へ移住したりしている。また、軍事工場は30~60%の賃上げで優秀な人材を引き抜いているが、公共サービスの予算は停滞したままだ。
抗うつ薬の売上は2019年から2025年の間にほぼ3倍に増加し、昨年は過去最高となる2,200万パッケージに達した。
ロシア情勢に詳しいスタニスラフ・スタンスキー氏は、この増加を戦争に起因する「広範な経済的・社会的ショック」と関連付けている。
OSW東方研究センターは、資金不足と人材流出に起因する公共サービスの「慢性的な危機」について報告している。
ロシアとイランの提携関係強化が、医療危機をさらに深刻化させている。
イランへのアプローチやサプライチェーンの再構築に投じられた資金は、ロシアの病院や薬局に使われなかった資金だ。
ルーブル高と世界的な景気後退のリスクから、必要不可欠な医薬品原料を含む市民向け輸入品への圧力が強まっている。
カーネギー国際平和基金やアトランティック・カウンシルの政治アナリストは、この「銃かバターか」というトレードオフは持続不可能だと警鐘を鳴らしている。
民間経済は現在、縮小の一途をたどっている。
プーチン大統領の国外での野望の代償を支払っているのは、届かない薬を待ち続けるロシアの家庭だ。
その真の代償は、戦場の地図では測れない。中身のない薬箱、疲れ果てた医師たち、そして命を落としたり、障害を負ったり、あるいは姿を消してしまった若者たちで測られるのだ。
クレムリンのプロパガンダが国外での同盟関係を称賛しているが、ロシアの一般市民には、厳しさの増す冬、長くなる順番待ちの列、そして短くなる人生が待ち受けている。
戦争はロシアを強くするはずだったが、現実は処方箋、年金支給書、病院のベッドが一つずつ失われていき、ロシアを内側から崩壊させている。