戦略的課題
ロシア国民、戦争と制裁の影響で「狂ったような」物価高に苦しむ
西側諸国の制裁によって供給網が混乱し、数十の消費者ブランドがロシア市場から撤退。ロシアのインフレ率は現在10%を超えている。
![6月10日、モスクワの市場で野菜を販売する露店商。[Alexander Nemenov/AFP通信]](/gc7/images/2025/06/17/50777-russia_inflation-370_237.webp)
AFP通信およびGlobal Watch |
モスクワ発 -- ロシア人退職者のロマン・パルティエヴィチ氏は、モスクワの市場に高く積まれたアンズやトマト、スイカの値札をじっと見つめていた -- 今では予算内で買うのが難しくなった食材だ。
「値段が狂ってる」と嘆く84歳の彼は、今ではサクランボはおろか、主食のジャガイモさえ買えないと言う。ジャガイモは1年前の3倍の値段になっているそうだ。
ロシアによる3年に及ぶ ウクライナへの軍事攻勢によって、ロシア国内のインフレが急騰している。これは自国民を戦争の影響から守ろうとするクレムリンにとって大きな悩みのの種となっている。
インフレ率、10%の壁を突破
西側諸国による制裁の影響で供給網が混乱し、数十の消費者ブランドがロシア市場から撤退。インフレ率は現在10%を超えている。
一方で、軍や兵器メーカーによる大規模な人員募集が深刻な労働力不足を引き起こし、賃金と物価の双方を高騰させている。
ロシア中央銀行は6月6日、過去20年で最高水準となっていた金利を引き下げた。食品価格を含むインフレが抑制されつつあると判断したためだ。
しかし、多くの困窮するロシア国民にとっては、そうは思えないのが実情だ。
パルティエヴィチ氏の妻タチヤナは、彼の隣でイチゴの小さなパックを握りしめて立っていた。孫たちへの貴重なおやつだったが、値段は400ルーブル(約5ドル)もした。
「1991年を生き抜いたんだから、今さら何も怖くないわ」と、彼女は毅然と語った。ソ連崩壊とその後の経済的混乱を振り返っての言葉である。
冷蔵庫を満たすために
モスクワのプレオブラジェンスキー市場では、通路行き交う多くの人々も、高騰する物価に不安を抱いていた。
「孫のために鶏肉を買いに来たんです。スーパーの方が高かかったので、もうそこで買うのはやめました」と、62歳のフリーランス画家のニコライ・クチェロフ氏はAFP通信に語った。
「旅行なんてあきらめました。ここ3〜4年は、冷蔵庫を満たすことだけを考えています」と彼は語った。
軍事費が一部の人々を支える
軍事費の 大幅な増加は、モスクワが一部のロシア国民をインフレや制裁の苦しみから守るのに役立っている。
エンジニアのコンスタンチン・ゼレンコフさん(38歳)は、政府の支出拡大による賃金上昇の恩恵を受けている一人である。
「値上がりしているものもありますが、給料も上がっているので、だいたい同じくらいに保たれています」と彼はAFP通信に語った。
ロシア中央銀行のエルヴィラ・ナビウリナ総裁も、賃金の上昇に言及しつつ、6月6日の時点でインフレが緩やかに低下し始めていると述べた。ただし、その水準は依然として中央銀行の目標である4%を大きく上回っている。
「高金利がインフレの大幅な鈍化につながりました」と彼女は記者団に語った。
全体として「食品価格の上昇率は鈍化しています」と彼女は付け加えた。
ジャガイモとパン、ますます高騰
しかし最近では、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領でさえ、主食のジャガイモの品薄による価格高騰への懸念に対応せざるを得なかった。
ロシア各地の多くの人々にとって、物価の上昇は終わりが見えないもののように感じられている。
「パンから始まって、すべてがどんどん高くなっているんです」と、68歳のイリーナ・ヤコブレワさんは語った。
「自分たちで節制するしかないんです」と彼女は付け加えた。