世界危機レポート

イランの核開発の野望、ウクライナの「運命的な非武装」を想起させる

攻撃的な政権が核の影響力を手中に収めれば、それを梃子に他国への脅迫、強請、さらには軍事侵攻へと踏み切る。敵対的国家による核兵器保有を阻止することこそ、国際社会の安全保障を維持する上で不可欠である。

1996年、ウクライナ・ペルヴォマイスクにて、SS-19大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射サイロの破壊状況を確認する米国のウィリアム・J・ペリー国防長官(左から2人目)、ウクライナのワレリー・シュマロフ国防相(右から2人目)、ロシアのパヴェル・グラチョフ国防相(中央) [Sergey Supinski/AFP]
1996年、ウクライナ・ペルヴォマイスクにて、SS-19大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射サイロの破壊状況を確認する米国のウィリアム・J・ペリー国防長官(左から2人目)、ウクライナのワレリー・シュマロフ国防相(右から2人目)、ロシアのパヴェル・グラチョフ国防相(中央) [Sergey Supinski/AFP]

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欧州そして世界は今、重大な岐路に立たされている。攻撃的な政権による歯止めのない核開発が、国際安全保障の秩序を永遠に変えてしまう可能性があるからだ。

イランの核戦力獲得に向けた執拗な追求は、脅迫、代理戦争、地域的混乱を通じて、イスラエルのみならず、より広範な国際秩序そのものを脅かしている―その中には 潜在的なエネルギー危機、テロ支援、そして欧州を襲う難民・移民危機も含まれる。

ロシアのウクライナ侵攻が痛烈に示すように、この苦労して得た教訓は明白だ。隣国に対して存立的脅威をもたらす国家には、いかなる場合も大量破壊兵器を保有させてはならない。

イランという存立的脅威

数十年にわたり、イラン政権はイスラエルの消滅を公然と呼びかけるとともに、ユダヤ人国家とその同盟国を標的とした代理勢力ネットワークとミサイル戦力の構築を進めてきた。

2008年に撮影されたこの写真は、モスクワ郊外で有刺鉄線のフェンスの向こうに配置されたロシアのトポリICBMを映している。 [Dima Korotayev/AFP]
2008年に撮影されたこの写真は、モスクワ郊外で有刺鉄線のフェンスの向こうに配置されたロシアのトポリICBMを映している。 [Dima Korotayev/AFP]
2024年、イスファハンで開催された核科学技術国際会議の展示会場に並んだイランのブシェフル原子力発電所の模型 [Atta Kenare/AFP]
2024年、イスファハンで開催された核科学技術国際会議の展示会場に並んだイランのブシェフル原子力発電所の模型 [Atta Kenare/AFP]

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、世界は「いかなる代償を払ってでも、イランの核兵器保有を阻止しなければならない」と宣言し、この問題の切迫性を的確に言い表した。

濃縮施設や弾道ミサイル計画の解体に向けた断固たる措置が取られなければ、イラン政権は「究極の盾」を手中に収め、その陰で攻撃を激化させても、いかなる代償も払うことなく行動できるようになりかねない。

分析専門家は、イランの遠心分離機の能力の拡大と濃縮ウランの備蓄が兵器級物質の製造に同国を近づけており、欧州に対する核の脅迫リスクを高める とともに、地域的混乱を招く恐れがあると警告している。

国際戦略研究所(IISS)および戦略国際問題研究所(CSIS)の分析担当者らは以前から、イランの核保有が中東全域で核拡散の連鎖を招き、テロ活動を助長し、欧州をエネルギー危機と難民・移民問題の悪化にさらす恐れがあると警告を続けてきた。

ガザからレバノン、さらにはその先まで攻撃を支援してきた同政権の足跡を鑑みれば、疑念の余地はない。これは平和的な原子力計画などではなく、国際社会の安定を直接脅かす明白な脅威なのである。

その阻止は任意ではない。ルールに基づく国際秩序を擁護するための、必要不可欠な防衛策である。

ウクライナの非武装が教えるもの

これとは対照的なのが、ウクライナの経験である。

1994年、ウクライナ政府はブダペスト覚書の下、世界第3位の規模を誇った核戦力を放棄し、ロシア、米国、英国による安全保障上の保証を信じた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は後に、この決断を「全くもって愚かで、非論理的であり、極めて無責任だった」と断じた。

もしこれらの核戦力が維持されていれば、ロシアが2022年に本格的な侵攻に踏み切ることはなかっただろう。大半の分析専門家がその見解で一致している。

その現実として、通常戦力のみを有するウクライナは、核武装した侵略者と対峙せざるを得なかった。相手は核戦力を「盾」として活用し、通常兵器による侵攻を進めながら、NATOの直接介入を牽制したのである。

今、ロシアは、脅威的な政権の手中に渡った核の力がどれほど危険かを、現実をもって示している。

ウラジーミル・プーチン大統領は、西側諸国のウクライナ関与が深まれば「核兵器使用を伴う紛争を招き、文明そのものを破滅に導く恐れがある」と警告を発している。

プーチン政権の核ドクトリンは、核使用の敷居を下げ、運搬手段の近代化を推し進めるとともに、これをハイブリッド戦と組み合わせる戦略を採っている。

核兵器とは本来、征服を容易にするための手段ではなく、抑止を目的とするものだ。国際法を順守する国家がこれを保有する場合に限り、平和の維持に寄与し得るのである。

だが、イランやロシアといった拡張主義的政権の手中に渡れば、核兵器は他国への脅迫、強請、支配を推し進めるための手段となり果てる。

ウクライナの前例がこの論点を如実に証明している。非武装化を選んだウクライナは侵略を招いた。もしイランが核戦力を手中に収めていれば、同様の脅威が桁違いの規模で現実のものとなっていただろう。

分析専門家らは、敵対的国家による核拡散が国際的な不拡散体制を弱体化させ、他国における模倣的核開発計画を招く恐れがあると強調している。

その教訓は明白である。イランが核保有の敷居を越えるのを阻止することは、単にイスラエルを防衛するためだけでなく、征服を志向する国家の手に核兵器が渡ってはならないという国際原則を堅持する上でも、極めて重要だったのである。

ロシアがウクライナに対して核戦力を誇示する現在、国際安全保障の行方は、その「レッドライン」を今そして将来にわたり断固として堅持できるかどうかにかかっている。

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