戦略的課題

ロシアのカリーニングラードで深刻化する孤立と経済的苦境

2022年からロシア全土でインフレが加速しているが、地理的に孤立しているカリーニングラードは特に深刻な打撃を受けている。

2025年10月15日に撮影された、カリーニングラード(旧ドイツ領ケーニヒスベルク)南駅の駅前にある、同市の名前の由来となったソビエト連邦最高会議議長ミハイル・カリーニンのモニュメント。[Alexander Nemenov/AFP]
2025年10月15日に撮影された、カリーニングラード(旧ドイツ領ケーニヒスベルク)南駅の駅前にある、同市の名前の由来となったソビエト連邦最高会議議長ミハイル・カリーニンのモニュメント。[Alexander Nemenov/AFP]

AFP通信/Global Watch |

NATO加盟国に囲まれて孤立したロシアの飛び地であるカリーニングラードの関係者や住民は、近隣の欧州連合(EU)加盟国から隔絶され、ロシアの他の地域から地理的に孤立していることによる経済的影響を感じている。

カリーニングラードを取り囲んでいるバルト三国はいずれもNATO加盟国だ。ロシアが2022年2月にウクライナ侵攻を開始して以来、バルト三国はウクライナを特に強く支持している。

ロシアの指導者ウラジーミル・プーチンは、 この軍事同盟が東へ拡大しないという“暗黙の約束”を破ったと、何年にもわたり非難してきた。

この主張について、ウクライナと西側諸国は、第二次世界大戦以降で欧州最大の衝突となったウクライナ侵攻を正当化する目的でプーチンが掲げた口実に過ぎないと退けている。

ロシアの近隣諸国では、対立の激化が明らかだ。

カリーニングラードと国境を接するポーランドとリトアニアは、限定的な例外を除いて、ロシア人に対し国境を事実上閉鎖している。

直近数週間に、エストニアとリトアニアからロシアのジェット機が領空を侵犯したという報告が上がっている。

「あの頃は今よりも良い生活ができていた」

ポーランドのカロル・ナヴロツキ新大統領は、ポーランド領空を飛行するロシアのドローンを撃墜するためNATOがジェット機を緊急発進させた後で、ロシアに関して「他の国々を攻撃する準備ができている」と述べている。

しかしカリーニングラード(旧ドイツ領ケーニヒスベルク)では、ウクライナ侵攻による影響は、イデオロギー的な影響よりも経済的な影響が大きい。

「以前はポーランドに買い物や散歩に行くことができた。バスやトラックも走っていた」と、48歳の機械工ヴィタリー・ツィプリアンコフさんは語る。「あの頃は今よりも良い生活ができていた。今はすべてが閉鎖されている。すべてが高価になり、本当にあらゆるものが値上がりした」

2022年からロシア全土でインフレが加速しているが、地理的に孤立しているカリーニングラードは特に深刻な打撃を受けている。EUの空域における飛行禁止により、同地域とロシア本土を結ぶ航空機は、遠回りしてフィンランド湾上空を経由しなければならなくなった。リトアニアを通過する鉄道ルートは封鎖され、乗客は移動のための通行許可証が必要となった。

「カリーニングラードの経済状況は非常に悪い」と、空港へ向かう道に面した、人がほとんどいないバルチヤショッピングモールで販売員として働くイリーナさんは語る。「ロシア(の他の地域)から商品を手に入れるための物流が非常に複雑だ。すべてが高価になっている」

国境付近のガソリンスタンドはほとんど閉鎖されている。また、ポーランドは現在、EUの居住権を持つロシア人のみ入国を許可している。イリーナさんは「事実上、この国に向かう交通は停止している」と付け加えた。

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