新たな課題

ロシアのハイブリッド圧力、露呈するのは強さではなく軋み

モスクワは欧州への圧力キャンペーンを拡大させているが、破壊工作やドローン、核シグナルへのシフトは、優位性を示すものであると同時に、その限界も浮き彫りにしている。

2026年7月8日、トルコ・アンカラのベステペ大統領宮殿で開かれたNATO首脳会議の傍ら、ウクライナのゼレンスキー大統領が米国大統領(写真外)と会談した。[Saul Loeb/AFP]
2026年7月8日、トルコ・アンカラのベステペ大統領宮殿で開かれたNATO首脳会議の傍ら、ウクライナのゼレンスキー大統領が米国大統領(写真外)と会談した。[Saul Loeb/AFP]

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ロシアの欧州への圧力は、もはやウクライナの戦場にとどまらない。今や、重要施設周辺でのドローン活動、サイバー作戦、破壊工作の疑い、偽情報、そして繰り返される核の警告といった形で展開されている。

こうした一連の動きが重要なのは、モスクワがこれを自らの行動範囲の広さの証明として提示しているからだ。しかし現実には、それは同時に制約も浮き彫りにしている。通常戦力による攻勢の勢いに自信を持つ国家であれば、曖昧さや恐怖、そして関与を否定できる破壊工作にこれほどまでに依存する必要はないはずだ。

ロシアのハイブリッド戦は危険である。しかしそれは、NATOに対する直接的な軍事行動が容易に制御し得ないリスクを伴うからこそ、クレムリンが圧力をかける急所を模索していることの表れでもある。

戦争に至らぬ圧力

NATOは、ロシアによるサイバーおよびハイブリッド活動を、同盟国を不安定化させ、モスクワによるウクライナ戦争を支援するための広範な活動の一環と位置づけている。EUも同様に、破壊工作、サイバー攻撃、情報操作を指摘している。

2025年11月17日、ポーランド中部ガルウォリン近くのミカで、鉄道線路が爆発により損傷した現場付近で警察車両が確認された。この線路は破壊工作の標的となったとみられている。[Wojtek Radwanski/AFP]
2025年11月17日、ポーランド中部ガルウォリン近くのミカで、鉄道線路が爆発により損傷した現場付近で警察車両が確認された。この線路は破壊工作の標的となったとみられている。[Wojtek Radwanski/AFP]

だからといって、ドローンの目撃情報やインフラ関連の事案がすべてロシアの作戦であるとは限らない。依然として、犯行主体の特定は重要だ。しかし、欧州各国政府が港湾、鉄道網、海底ケーブル、軍事施設、原子力施設の防御を強化していることからも、その傾向は明らかである。

核の側面は意図的だ。国際戦略研究所は最新の分析で、核関連施設周辺の敵対的活動は、本格的な攻撃の閾値を下回るレベルであっても恐怖を引き起こし得ると警告している。

重要施設周辺での小型ドローンの飛行は、低コストで関与を否定しやすく、心理的な効果も高い。モスクワはかねてから不確実性を一つの手段として利用してきた。

変わったのは、莫大なコストを要する消耗戦に足を取られたままのロシアが、欧州全域でそうした手法を展開する頻度だ。その狙いは、各国社会に自らのレジリエンスへの疑念を抱かせ、ウクライナ支援を巡る意見の対立を深めることにある。

核のレトリックは今なお真剣に受け止める必要がある、 だがこうしたシグナル発信は、戦闘態勢の差し迫った変化を示すものではなく、むしろ戦況の悪化に付随することが多い ものであり、長期化する消耗戦の中で限定的な強制力しか発揮していない。繰り返し行われることで、その効力は時間とともに薄れていく。

国内コストの増大

ロシアが抱える問題は、対外威嚇が国内で軋みを招いている点にある。

ロシア中央銀行は2026年6月、政策金利を小幅に引き下げた。それでも同銀行は、燃料生産の問題などによるインフレリスクが高水準で推移しているとして、引き続き警戒を呼びかけた。ウクライナによる製油所への攻撃が、燃料供給の混乱の一因となっている。

ロシアの2026年1~5月の財政赤字は、すでに年間目標を上回った。軍事費は増加の一途をたどっている。

そうした圧力は、ロシア経済が崩壊しつつあることを意味するものではない。しかし、戦時経済を維持するための代償を浮き彫りにしている。

キール研究所の報告によると、ロシアの主権基金の流動資産は開戦以降、大幅に減少した。2026年第1四半期の石油・ガス収入は前年比45%下落した。

キール研究所の報告書に寄稿したマシュー・C・クライン氏は、ロシアの根本的な問題は「人材、技術、生産能力の確保」にあると指摘する。資金は増刷や借り入れで調達可能だ。しかし、熟練労働力や産業基盤の厚みは容易に代替できるものではない。

ロイター通信によると、ロシアは少なくとも230万人の労働者が直ちに不足しており、 戦争による損失で悪化したこの不足は 、すでにモスクワに作戦を維持するための外部からの増援を求めることを余儀なくさせている。CSISは、ロシア軍が本格侵攻以降、異常な規模の犠牲者を出していると推定している。

こうした状況が、モスクワによるハイブリッド戦の背景にある。ロシアは今なお、ミサイル、サイバー部隊、エネルギーを梃子とした影響力、そして核戦力を保持している。それらの戦力は依然として無視できない脅威である。

しかし、破壊工作やドローンを用いた妨害、核シグナルの発信への傾斜は、エスカレーション管理を維持しつつ影響力の範囲を広げようとする国家の姿を浮き彫りにしている。

欧州およびより広範な同盟陣営が肝に銘ずべき教訓は、規律の徹底である。ロシアの脅威は現実のものとして直視しつつ、あたかも全能であるかのように過大評価してはならない。インフラを防護し、偽情報を暴き出し、原子力およびエネルギー関連施設の防御を強化することだ。

ウクライナへの支援は、モスクワがあらゆる警告を拒否権のように行使して方針を覆させないよう、十分に予測可能な形で維持すべきだ。

ロシアは、自らのハイブリッド戦を戦略的射程の広さの証として誇示しようとしている。しかし、それが露呈しているのはむしろその逆かもしれない。危険な手段こそ有してはいるものの、選択肢は先細りし、コストは増大し、威嚇を永続的な政治的果実に変える手立てがますます限られてきている大国の姿である。

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