新たな課題

党の言説を拡散する中国のインフルエンサー

中国政府は、プロパガンダではなく、個人の意見のように感じられるよう、著名人やオピニオンリーダーを密かに動員して、日常生活のコンテンツに愛国的なメッセージを巧みに組み込んでいる。

2024年11月2日、台北インターネットセレブリティカーニバルに参加するインターネットセレブリティやキーオピニオンリーダーたち。 [CFOTO/NurPhoto/AFP]
2024年11月2日、台北インターネットセレブリティカーニバルに参加するインターネットセレブリティやキーオピニオンリーダーたち。 [CFOTO/NurPhoto/AFP]

Global Watch |

中国は、国内のインフルエンサーや著名人たちを密かに動員して、中国共産党のメッセージを日常生活のコンテンツに組み込んでいる。

このアプローチを採用することで、国家の言説はトップダウンで押し付けられるものではなく、個人の意見のようで、信頼できるものとして感じられるようになるのである。そして、国内の何億人もの人々に届き、主要メディアにはほとんど注目しないような世界中の人々にも微妙な影響を及ぼすことができる。

現在では、この言説の仕組みはソーシャルメディア上の人物だけに留まらない。市民団体、経済団体、地域組織を通じて、日常生活の中で中国政府の政治的意向を自然に受け入れるよう仕向ける、より広範な影響工作のエコシステムに組み込まれているのだ。

大きくなる愛国主義者の声

かつてライフスタイルやエンターテインメントを中心に活動していた著名人たちは、現在では慎重に設計された愛国的なコンテンツを発信している。

2024年11月2日、台北インターネットセレブリティカーニバルに参加するインターネットセレブリティやキーオピニオンリーダーたち。 [CFOTO/NurPhoto/AFP]
2024年11月2日、台北インターネットセレブリティカーニバルに参加するインターネットセレブリティやキーオピニオンリーダーたち。 [CFOTO/NurPhoto/AFP]

『環球時報』の元編集長である胡錫進氏は、インフルエンサーとして活動を続けており、WeiboやTikTokでのフォロワー数は数千万人に上る。同氏はどの国際紛争も「西側による封じ込め」という見方で論じている。

若い「小粉紅」と呼ばれるクリエイターや、国家が指導したキーオピニオンリーダー(KOL)は、このモデルをさらに発展させ、「ポジティブなエネルギー」を称えるショート動画を制作している。しかし、新疆ウイグル自治区や香港における人権問題にはほとんど触れようとしない。

中国サイバースペース管理局は、選ばれたインフルエンサーを対象に定期的なトレーニングキャンプを実施し、流行のトレンドと政府が承認する言説をどのように組み合わせるかについて指導している。

メルカトル中国研究所が2025年に実施した調査によると、昨年だけで500人以上の影響力のあるKOLが直接指導を受けて、報奨金を得ていたことが明らかになった。

こうしたクリエイターは、一般視聴者がプロパガンダであることに気付かないよう、購入したファッションの紹介動画、旅行で役立つ情報や料理の動画に、「国外の敵対勢力」に対する微妙な皮肉を組み込むのだ。

中国のテクノロジー分野でも同様の論理が広まりつつある。

中国のAIモデルに関する報告で、AIモデルが歴史上の出来事を検閲し、国家指導者への批判を遮断し、共産党の言説に沿った回答を生成している実態が明らかになった。これは、プロパガンダが人間だけにとどまらず、人々が日常的に使用するデジタルツールにも組み込まれていることを示している。

中国国外に広がる影響力

あまり注目されていないが、中国国外の中国人インフルエンサーや在外中国人向けプラットフォームを通じて、このモデルが中国国外に展開されている。

中国政府は、欧米のクリエイターに対し、投稿を現地の言語で作成し、西側の混乱に対する安定した代替案として中国をアピールするよう働きかけている。

オーストラリア戦略政策研究所のアナリストは、台湾情勢の緊迫時や南シナ海での問題発生時にこれらのアカウントが連携して、中国政府の姿勢を自然に見える形で支持する内容をプラットフォームにあふれさせている実態を報告した。

上級研究員であるサマンサ・ホフマン氏はこの論理について、「中国共産党は、公式な広報担当者は無視されやすいという事実に気づいたのです。地域密着型のインフルエンサーは、もっともらしい否認可能性と感情面の結び付きを生み出します。これは国営メディアにはできないことです」と説明する。

このインフルエンサーの層は、中国の軍事近代化や一帯一路外交を補うものとなる。

これにより、過度な検閲のみに依存することなく、国外からの批判を緩和し、国内の結束を維持できるのである。

政治アナリストは、こうしたネットワークが拡大するにつれ、世界中の開かれた情報環境に対する信頼が損なわれ、世界の安全保障に新たな脆弱性が生じると警鐘を鳴らしている。

無害なソーシャルメディアのように見える存在が、中国の言説による影響力行使の中核的な柱へと急速に変わりつつある。このあまり報道されないツールは、経済的・軍事的手段とともに、密かに機能しているのである。

この記事は気に入りましたか?