戦略的課題
将軍銃撃事件受け、露の警備体制の甘さに批判集中
モスクワでウラジーミル・アレクセーエフ中将が暗殺未遂の標的となった事件は、ロシア軍高官の警護体制に深刻な脆弱性が横たわっていることを浮き彫りにした。

Global Watch |
2026年2月6日、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)次長のウラジーミル・アレクセーエフ中将がモスクワの自宅アパートの階段で大胆な襲撃を受け、3発の銃弾を浴びた。
襲撃には消音器付きマカロフ拳銃が使用され、アレクセーエフ中将は緊急手術を受けたものの予断を許さない重体。ロシア当局は即座に3人の容疑者を特定した。実行犯としてウクライナ出身のロシア国籍保有者リュボミール・コルバ、モスクワで拘束されたヴィクトル・ヴァシン、そしてウクライナへ逃亡したとみられるジナイダ・セレブリツカヤの3名を挙げている。
ロシア連邦保安庁(FSB)はウクライナ情報機関が暗殺を主導したと主張しているが、専門家はこの説明が内部の警備体制に横たわる深刻な不備を覆い隠そうとしているとの見方を示している。
同様の事件は今回が初めてではない。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、高官を標的とした襲撃が相次いでいるが、こうした傾向は主流メディアの報道で見過ごされがちだ。
2024年12月、ロシア軍放射線・化学・生物防護部隊司令官イーゴリ・キリーロフ中将がモスクワで爆弾事件により殺害された。
ロシア軍参謀本部作戦訓練局長のファニル・サルヴァロフ中将も2025年12月、自動車爆弾による襲撃で命を落とした。
相次ぐ襲撃
これらの事件は、ロシア中枢で暗殺者が要人の警護の隙を突き、自由に活動するという懸念すべき傾向を浮き彫りにしている。
アナリストによると、過去2年間だけで少なくとも5件の高官級軍人を標的とした暗殺や未遂事件が発生しており、こうした襲撃が急増している。
ウクライナ戦略通信センターは、近距離での銃撃という手法は、これまで爆発物が主流だったウクライナ関連の事件とは異なり、ロシア内部の関与を示唆している可能性があると指摘した。
アレクセーエフ中将クラスの将官に対する警護体制は不十分なままとなっている。
近隣住民によると、アレクセーエフ中将の住むビルでは防犯カメラが故障していたという。これはGRU次長クラスの要人に対する極めて初歩的な警備の失態であり、「ロシア最高位の情報当局幹部の警備がいかに脆弱だったかを物語る細部だ」と政治アナリストのギオルギ・レヴィシュヴィリ氏はXに投稿した。
防衛相や参謀総長とは異なり、大半の将官は専属のボディーガードを付けず、不十分であることが明らかになった標準的な警護手順に頼っているのが実情だ。
ロシア連邦保安庁(FSB)と調査委員会はアレクセーエフ中将銃撃事件を外国による破壊工作と位置付け、UAEの協力を得てドバイでコルバを拘束し、迅速に身柄を引き渡した。
しかし、ウクライナを早々と非難する姿勢は過去の対応の焼き直しであり、国内問題から目をそらす意図が透ける。
アレクセーエフ中将が2023年のワグネル蜂起時に交渉役を務めた経緯が、ロシア政権内部に仇敵を生んだ可能性もある。
こうした内部の亀裂は、増大する人的・物的戦費によってさらに深刻化しており、その結果、外国人戦闘員の徴用が行われているが、彼らの多くは欺瞞や強制によって動員され、凄惨な前線の状況に直面している 。。
体制内部の脆弱性
詳細な分析が明らかにするのは、体制に横たわる構造的なひび割れだ。
同様の事件が続いたことを受け、プーチン大統領は昨年、警備体制の不備を認める異例の声明を出した。
英国に本部を置く安全保障・対テロ戦略研究所タクティクス・インスティテュートは、アレクセーエフ中将銃撃事件を「標的を絞った殺害事件が増加する傾向の一部」と指摘し、ロシアが軍指導層を守り切れていない実態を浮き彫りにした。
スカイニュースの国際編集長ドミニク・ワゴーン氏は、今回の事件が「ロシア軍情報機関の頂点に立つ人物に対する警備体制の致命的な失敗」を示している可能性があると指摘した。
警備の不備は個人レベルにとどまらない。安全確保のため将官が執務室で寝泊まりしているとの報道もあり、ロシア軍指導部の士気や実戦能力が脅かされている。
同時に、アレクセーエフ中将銃撃事件はより広範な危機を浮き彫りにしている。外部との紛争が続く中、ロシアが国内治安を維持するのに苦慮している実態だ。