新たな課題

スターリンク、人工衛星、そして紛争の未来

宇宙は軍事・経済・市民生活においてますます重要な領域となりつつある。このため、宇宙空間を敵対的行為から守ることは、もはや世界的な最優先課題とならねばならない。

ウクライナ軍兵士が2023年6月、チェルニーヒウ州で行われた軍事演習中にスターリンクシステムを使用している様子。[マクシム・マルセンコ/ヌルフォト/AFP提供]
ウクライナ軍兵士が2023年6月、チェルニーヒウ州で行われた軍事演習中にスターリンクシステムを使用している様子。[マクシム・マルセンコ/ヌルフォト/AFP提供]

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ウクライナ戦争が示したように、宇宙は21世紀の戦争において極めて重要な領域となっており、人工衛星や先端技術が戦局を左右する決定的な役割を果たしている。

スペースX社が運用するスターリンクは、ウクライナ軍に高速インターネット接続を提供し、安全な通信やリアルタイムの情報共有、精密誘導攻撃を可能にしている。また、ロシアの攻撃によって従来の通信インフラが破壊された地域においても、市民や政府関係者が連絡を維持できるようにしている。

こうした宇宙基盤技術への依存は、現代戦の様相を根本から変えてしまった。

もはや勝敗は、地上に展開する兵力や戦車の数だけで決まる時代ではない。むしろ、人工衛星ネットワークを含む先端技術をいかに活用できるかが、戦力を飛躍的に高める鍵となっている。

ウクライナにとってスターリンクはまさに生命線となっており、はるかに大規模な敵に対して、その実力以上の戦いを可能にしている。

しかし、スターリンクのようなシステムへの依存は、宇宙インフラが敵対的行為に対していかに脆弱であるかをも露呈させている。

最近の情報筋によると、ロシアはスターリンク衛星群を標的とする新型の対衛星兵器を開発している可能性があるという。

この兵器はいわゆる「ゾーン効果(zone-effect)」型と呼ばれ、スターリンク衛星の軌道上に高密度の金属片を大量に散布することで、複数の衛星を一斉に無力化するという。このような兵器はスターリンクを標的とするだけでなく、制御不能な宇宙空間の混乱を引き起こし、ロシアやその同盟国である中国を含む他国の人工衛星にも深刻な危険を及ぼす可能性がある。

こうした兵器の無差別的な性質は、極めて深刻な懸念を引き起こしている。攻撃によって生じた宇宙デブリは、国際宇宙ステーション(ISS)や中国の「天宮(ティアングン)」宇宙ステーションなど、重要な宇宙インフラを損傷する恐れがある。その結果、連鎖的な破壊が起きれば、宇宙利用国すべてに甚大な影響を及ぼしかねない。

この「恐怖の兵器」は実際に使用されなくとも、敵対勢力を抑止する効果を持つ可能性がある。しかし、一度でも使用されれば、世界の宇宙インフラに壊滅的な打撃を与えるリスクを伴う。

未来への教訓

こうした兵器の実現可能性はいまだ不確かなものの、宇宙の軍事化がもたらす影響は極めて深刻であり、ロシアとウクライナにとどまらず、国際秩序全体に関わる問題である。

宇宙は軍事・経済・市民生活においてますます不可欠な領域となりつつある。このため、宇宙空間を敵対的行為から守ることは、もはや国際社会全体の最優先課題とならねばならない。

NATOとその同盟国にとって、教訓は明らかである。宇宙はもはや二次的な作戦領域ではなく、 防衛すべき主要な領域である.

そのためには、衛星を物理的・サイバー攻撃から守るための対策を含む、宇宙インフラのレジリエンス(耐障害性)強化への投資が不可欠だ。同時に、宇宙の軍事化を防ぎ、平和的利用を確保するための国際的な協力と、新たな規範・合意の構築も急務である。

米国、欧州およびその同盟諸国にとって、宇宙における優位性を維持することは、単に人工衛星を守る以上の意味を持つ。それは、宇宙がもたらす戦略的優位性そのものを守ることにほかならない。同時に、宇宙がもはや遠く離れたフロンティアではなく、国家安保の根幹をなす不可欠な領域であるという認識が求められている。

今後の戦争は、地上と同様に軌道上でも展開されるだろう。宇宙は新たな最前線であり、その防衛は各国の安全保障と平和の維持にとって不可欠である。

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