戦略的課題

「信用できない」:ロシア国民、政府主導のメッセージアプリに懐疑的

政府はメーカーに対し、国内で販売されるスマートフォンやタブレットにこのアプリを標準搭載するよう指示したうえで、外国企業が運営する競合アプリの通話機能を遮断。批判者はこれを、ユーザーを強引に移行させようとする露骨な試みだと指摘している。

2025年12月1日、ドイツ西部フランクフルト・アム・マインで撮影された合成写真。スマートフォンの画面に、米国製インスタントメッセージングアプリ「WhatsApp」のロゴが映し出されている。【キリル・クドリャフツェフ/AFP】
2025年12月1日、ドイツ西部フランクフルト・アム・マインで撮影された合成写真。スマートフォンの画面に、米国製インスタントメッセージングアプリ「WhatsApp」のロゴが映し出されている。【キリル・クドリャフツェフ/AFP】

AFP発 |

当局がWhatsAppやTelegramの代替として期待を寄せる新たなロシア製メッセージングプラットフォームは、政府関係者の間で高評価を受けているが、モスクワの街頭ではその受け止め方が分かれている。

今年初めにロシアの大手SNS企業VKがリリースした「Max」は、「スーパーアプリ」として宣伝されている。中国の「WeChat(ウィーチャット)」や「Alipay(アリペイ)」と同様に、行政サービスの利用からピザの注文まで、あらゆる機能を一つのアプリで実現できるという。

政府は9月1日から、国内で販売されるすべての新規スマートフォンおよびタブレットにこのアプリを標準搭載するようメーカーに指示した。一方で、外国企業が運営する競合アプリの通話機能を遮断しており、批判者はこれをユーザーを強制的に移行させようとする露骨な措置だと非難している。

当局は「Max」が安全であり、海外にデータを保存する外国企業運営のプラットフォームへの依存を減らすと強調している。しかし人権擁護団体は、このアプリがエンドツーエンド暗号化を備えていないことを指摘し、強力な監視ツールとして悪用されるリスクがあると警告している。

「あまり信用できませんね」と話すのは、姓を明かさないことを希望した39歳の医師、エカテリーナさんだ。

勤務先から業務用にこのアプリのインストールを義務付けられているが、個人的な連絡には主にWhatsAppを使っていると彼女は話した。

「WhatsAppには失いたくない個人的なメッセージのやりとりがあるほか、仕事関連のコミュニケーションも残っています」と彼女は語った。

「そこにたくさんのクライアントがいますから。」

「私たちの自由の制限」

ロシア国民には、もはや選択の余地がほとんどないかもしれない。

11月29日、メディア規制当局のロスコムナドゾール(Roskomnadzor)は、WhatsAppを「犯罪行為の温床」として全面的な使用禁止を検討していると発表した。同当局はすでに8月から、同プラットフォーム上の通話機能を遮断している。

国内で約1億人のユーザーを擁するWhatsAppは、ロシアが「安全な通信を提供している」ことを理由に同アプリを規制しようとしていると非難した。

「状況は複雑です」と、33歳のアンドレイ・イワノフ氏はAFPに語った。

彼は、「WhatsApp上の情報が『他国に盗まれる』恐れがある」と懸念を示しつつも、「そちらでコミュニケーションを取るのは便利だ」と語った。

「これは私たちの自由をある種制限するものです」と、イワノフ氏は、ユーザーを強引に移行させようとする計画について語った。

米国の大手テクノロジー企業メタ(Meta)が所有するWhatsAppは、エンドツーエンド暗号化を採用している。これにより、送信者の端末から送られるメッセージは暗号化され、受信者の端末でのみ解読・閲覧が可能となる。

同プラットフォームによると、暗号化されたメッセージは配信中にメタ社のサーバーに一時的に保存されるが、配信完了後は即時に削除され、政府からの要求にもかかわらず、これらのデータの提供を拒否しているという。

とはいえ、モスクワでは懐疑的な声も少なくない。

「海外で開発されたものすべてが今や我々にとって脅威だということは理解しています」と、67歳のロシア人年金生活者、セルゲイ・アブラモフさんは話した。

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