防衛動向

ドイツ、ロシアの脅威をにらみ宇宙分野の防衛力を強化

この取り組みは、宇宙分野でさらなる自立を図ろうとする欧州諸国の動きに続くものだ。

欧州宇宙機関(ESA)のアリアン6型ロケットが、ESAの地球観測衛星「センティネル1D」を搭載し、2025年11月4日、仏領ギアナのクールーにあるギアナ宇宙センターから打ち上げられた。[ロナン・リエタール/AFP]
欧州宇宙機関(ESA)のアリアン6型ロケットが、ESAの地球観測衛星「センティネル1D」を搭載し、2025年11月4日、仏領ギアナのクールーにあるギアナ宇宙センターから打ち上げられた。[ロナン・リエタール/AFP]

AFP通信 |

ドイツは11月19日、同国初となる宇宙安全保障戦略を発表した。ボリス・ピストリウス国防相は、宇宙空間における軍事・民間双方の能力を拡充すると表明した。

この戦略は、ピストリウス氏がロシアおよび将来的には中国がもたらす脅威の高まりを挙げ、2030年までに宇宙防衛分野に350億ユーロ(約410億ドル)を投じる計画を発表してから数週間後に示されたものだ。

「我々は抑止力と防衛力を備え、それを発展させなければならない」と、ピストリウス氏はベルリンでの記者会見で述べた。

ピストリウス氏は、「ロシアと中国はともに宇宙分野に『深く関与』しており、欧州および米国の他の衛星に『影響を及ぼす態勢を整えている』」と指摘した。

同氏は、「ドイツ一国ではロシアや中国に対抗できない」と認めたうえで、欧州のNATO加盟国が連携し、「我々が行動力と防衛力を維持できるようにすべきだ」と述べた。

ドイツのこの取り組みは、宇宙分野でのさらなる戦略的自立を図ろうとする欧州諸国の動きを踏まえたものだ。

欧州宇宙機関(ESA)は、多国籍共同プロジェクトとして、2030年までに「IRIS2(アイリス・ツー)」と呼ばれる通信衛星コンステレーションの打ち上げを計画している。

10月、欧州を代表する3大航空宇宙企業が、人工衛星事業を統合し、米国の富豪イーロン・マスク氏が率いるスペースX社(SpaceX)およびその衛星インターネットシステム「スターリンク(Starlink)」に対抗しうる欧州発の有力な競合企業を創設する計画を発表した。

衛星システムは、現代の通信やインターネットサービス、GPS、気象予測において極めて重要な役割を果たしており、これらは軍事作戦はもとより、市民生活にも大きな影響を及ぼしている。

軍拡競争を防ぐために

ピストリウス氏は、ロシアによるウクライナ全面侵攻の開始直後に衛星を標的としたサイバー攻撃が発生し、その影響でドイツ国内の数百基の風力タービンが停止する事態に至ったと指摘した。

「宇宙空間での効果的な攻撃が衛星システムにもたらす影響がどれほど深刻か、誰もが想像できるだろう。国家全体が麻痺しかねない。欧州諸国、ドイツ、そしてNATOがこうした脅威から自らを守ろうとすることは、極めて自然なことだ」とピストリウス氏は述べた。

同氏は、ドイツが「宇宙で攻撃的な戦略を pursue(追求)することは決してない」と強調しつつも、敵対勢力に対して反撃能力を有しておくことは必要だと述べた。

「我々は現在も将来も、他国の衛星を攻撃することも、他国が衛星を攻撃することも決して許さない」とピストリウス氏は述べた。

プレスリリースによると、ドイツは「軍拡競争を防ぐ」ため、宇宙を「平和的かつ持続可能で、ルールに基づく」形で利用することを目指している。

欧州諸国が協力して進めている宇宙関連の取り組みには、共同での打ち上げ体制の構築、再利用型ロケットの開発、および国際宇宙プログラムが含まれる。

宇宙・研究担当相のドロテー・ベーア氏は、ドイツの宇宙安全保障戦略には「小惑星からの防御プログラム」や、「宇宙ゴミ(スペースデブリ)という重大課題への対応」も含まれていると述べた。

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