防衛動向
ドイツ、ロシアと中国の脅威の高まりを受け、北極地域で巡視活動を開始
北極圏でのロシアと中国の活動拡大化を受けて、米国および同盟国の軍事力の強化を求める声が高まっている。
![2024年3月10日、北極圏の北に位置するノルウェーのソルストラウメン沖で実施された軍事演習「ノルディック・レスポンス24」の一環として、水陸両用攻撃のデモンストレーションで位置につくイタリア海兵隊。今回の演習には、空軍・海軍・陸軍の部隊が参加し、100機以上の戦闘機、50隻以上の艦艇、2万人以上の兵士が動員された。[Jonathan Nackstrand/AFP通信]](/gc7/images/2025/07/08/51028-arctic-370_237.webp)
AFP通信およびグローバルウォッチ |
ドイツは、ロシアと中国による北極海での軍備増強を受けて、同地域に海軍艦艇を派遣し、巡視活動を開始すると発表した。
ドイツのボリス・ピストリウス国防相は、「海洋での脅威が高まっている。例を挙げるとすれば、ロシアが北極圏で軍備を強化していることだ」と、6月30日の記者会見で述べた。
同国防相は「その地域でロシアの潜水艦の活動が活発化している」と、デンマークのトロエルス・ルンド・ポールセン国防相とともに付け加えた。
そのため、ピストリウス国防相は「早ければ今年中にも、ドイツは北大西洋と北極海での存在を示すことになる」と述べた。
デンマーク政府は年初、デンマークの自治領であるグリーンランドおよびフェロー諸島と連携し、この地域の安全保障を強化するために、146億デンマーク・クローネ(23億ドル)を投入する方針を発表していた。
ピストリウス国防相は、「アトランティック・ベア」と名付けられた任務の一環として、ドイツの支援艦「ベルリン」がアイスランドからグリーンランドを経由して、カナダに向かう予定だと述べた。
「この航路に沿って、同盟国と合同演習を実施する予定であり、グリーンランドのヌークにドイツ海軍の艦船が初めて寄港する計画も立てている」とピストリウス国防相は述べた。
「戦略的な重点」
「その後、国防相は、カナダの北極圏演習『ナヌーク』に初めて参加すると続けた。そして、その地域に対するコミットメントを示すために、海洋哨戒機、潜水艦、フリゲート艦を派遣すると付け加えた。
ドイツによるこの発表は、北極圏の安全保障への注目が高まっている中で行われた。
同地域におけるロシアと中国の存在感の拡大 -合同軍事演習や影響力の増大に象徴される--は、米国および同盟国の軍事プレゼンス強化を求める声を高めている。
米国の軍事シンクタンクは、この2大国に対抗し、戦略的重要性が高まる北極地域を守るため、米国国防総省に北極圏の合同タスクフォースを設立することを要請している。
米国沿岸警備隊のウィリアム・ウォイタラ大佐とグラント・トーマス大佐は、国家安全保障問題を専門分野とする非営利軍事団体である米国海軍協会が3月に発表した記事で、「こうした合同タスクフォースの体制は、戦域間の連携を強化し、北極圏を戦略的な重点地域とすることができる」と述べている。
米国国防総省は、中国およびロシアに対抗するため、北極圏への資金投入の拡大を要請している。2024年7月に発表された国防総省の戦略報告書には、同地域における探知機、通信機能、宇宙関連技術の強化に向けた投資の拡大が求められると記されている。
NATOは、冷戦終結以来最大規模の西側の軍事同盟による軍事演習を2024年3月に実施するなど、 北極圏での防衛を強化 している。この演習には、NATO全加盟国の32か国から約9万人の兵士が動員され、NATOの北極圏周辺地域への攻撃を想定した演習が行われた。