欧州連合（EU）、ロシアを念頭に軍事的移動の障壁を撤廃へ

AFP発 | 2025-11-21

ロシアとの間でいずれ武力衝突が発生するのではないかという懸念が高まる中、欧州連合（EU）は、戦車や部隊の欧州大陸内での移動を阻害する官僚的手続きやボトルネックへの是正に着手している。

ある欧州当局者は、この課題をこう要約した。「スペインに駐留する戦車部隊が、戦争が終わってからポーランドに到着してしまうようなことがあってはならない。どうすればいいのか？」

現在のところ、そのような事態を防ぐ保証はまったくない。

現在、戦車その他の重装備は、欧州連合（EU）域内を通過する際に、国ごとの通行許可が必要とされている。許可を得た場合でも、道路や橋の耐荷重を超えることを避けるため、長距離の迂回を余儀なくされるケースが頻繁にある。

「欧州軍隊の迅速な機動は、欧州防衛にとって不可欠だ。」と、欧州連合（EU）の外務・安全保障政策担当上級代表、カヤ・カラスは11月19日に語った。「部隊が、必要な場所に、必要なタイミングで到着できるようにしなければならない。」

ロシアが2022年にウクライナを侵攻して以降、欧州は防衛力強化に駆け足で取り組んできたが、今年、EU監査院は、27カ国からなる欧州連合域内における部隊や武器の移動が依然として「課題が多い」と指摘。また、「誰が何を担当しているのか」が明確でない状況であると警告した。

欧州会計院は、EUにおける軍事移動のガバナンス体制について、「複雑かつ断片化されている」と批判した。例えば、ある国の戦車が道路交通規制で許容される重量を超える場合、他国を通過できないといった問題があると指摘している。

象徴的な事例として、2022年、フランスは戦車をルーマニアへ輸送しようとした際、ドイツが重装備の道路輸送を認めなかったため、鉄道をチャーターして輸送を余儀なくされた。

欧州委員会の計画の一環として、有事における欧州内での部隊移動ルート上に、約500カ所の主要なボトルネックが特定されている。

これらの多くは、ロシアのウクライナ侵攻を受けて最優先課題となっている機動性を実現するため、緊急な整備・強化が求められている。

行動の必要性を強調するため、EU防衛担当委員アンドリウス・クビリウス氏は、第一次世界大戦で欧州駐留米軍を率いたジョン・J・パーシング将軍の有名な言葉を引用した──「歩兵は戦闘に勝利し、兵站は戦争に勝つ」。

ボトルネックの解消に向け、欧州委員会は現在のばらばらな許可制度に代わり、EU全域で有効な単一の通行許可を導入する案を提案している。現行制度では、一部の国で45日前までに申請が必要とされるなど、機動性を阻む要因となっていた。

緊急時には、遅延を防ぐため、ブリュッセルは優先通行の明確なルールを定めるよう求めている。

また、トラックなどの軍民両用防衛資源を各国が共有し、迅速に活用できる「連帯メカニズム」の導入も予定されている。

クビリウス氏は、EUのこの計画が「大きな前進」であると評価した。

システムの実効性を確保するため、欧州委員会は、インフラが重装備の軍事輸送に耐えられるかを確認するため、定期的な「ストレステスト」を実施すると述べた。

この問題への認識は決して新しいものではない。NATOは長年、懸念を抱いてきたし、欧州委員会もこれまでに二つの行動計画を策定してきた—最新のものは2022年11月に発表されたが、会計院からは不十分との評価を受けた。

ブリュッセルは、2028年から2034年までの間に170億ユーロ（約197億ドル）を軍事機動性の強化に専用する計画だ。これは、前回の長期予算に比べて10倍に相当する規模である。

欧州委員会は11月19日、人工知能（AI）から量子コンピューティング、宇宙システムに至るまで、欧州の防衛産業を新興技術に近づけるための措置を発表した。

武器メーカーはすでにこれらの技術を広く活用しているが、ブリュッセルは共同開発プロジェクトを促進する一方で、特に欧州が育成を進める「AIファクトリー」—人工知能ソリューションを試験・検証するための施設—を防衛企業にも開放するよう推進している。