新たな課題

NATO、宇宙での長年の核兵器禁止に対するロシアの脅威を警告

ロシアが宇宙に核兵器を配備すれば、ウクライナとその同盟国が戦争で使用している衛星だけでなく、民間や商業への用途に幅広い衛星システムも危険にさらされる可能性がある。

2020年2月7日、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から、34基のOneWeb通信衛星を搭載したソユーズ2.1bロケットが打ち上げられた。[ロスコスモス提供]
2020年2月7日、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から、34基のOneWeb通信衛星を搭載したソユーズ2.1bロケットが打ち上げられた。[ロスコスモス提供]

グローバル・ウォッチ報道 |

NATOは、ロシアが宇宙への核兵器配備を模索しているとの報道を受けて、強い警戒感を示している。実現すれば、世界の安全保障や日常生活に欠かせない数千基の衛星が脅かされる可能性がある。

「ロシアが宇宙に核兵器の配備を検討しているという報道を把握している」と、NATOのマルク・ルッテ事務総長は4月12日付のドイツ紙『ヴェルト・アム・ゾンターク』で語った。「宇宙での核兵器の開発は、ロシアが自国の能力を強化する手段であり、極めて憂慮すべき事態だ」

ルッテ事務総長は、宇宙の戦略的重要性が高まっていることを強調し、「宇宙は、陸・海・空・サイバー空間と同様に、防衛と抑止の観点から極めて重要だ」と述べた。

「近年、宇宙はますます混雑し、危険で予測不可能な空間となっている」と彼は述べた。「宇宙における競争が激しさを増していることは、我々も認識している。」

ロシアの宇宙における核兵器の存在は、ウクライナとその同盟国が現在の戦争で使用している衛星だけでなく、広範囲にわたる民間および商業用システムにも危険を及ぼす可能性がある。

「宇宙ベースのシステムは私たちの生活に直結している」とルッテ事務総長は述べた。「例えば、携帯電話、銀行サービス、天気予報が機能するために不可欠だ。」

「攻撃と防御の機動演習」

ロシアと中国はともに、宇宙で攻撃を行う能力を高めるための活動に注力してきた。

昨年、アメリカの当局者は、ロシアが1967年の『外空条約(OST)』に直接違反し、より高度で核搭載可能な対衛星兵器(ASAT)の開発を進めていることを確認した。

最近、ロシアの衛星が「攻撃と防御」の機動演習を行っている様子が記録されたと、CNNは3月16日に報じた。複数のロシア衛星が協力して、低軌道衛星を取り囲み、米国やその同盟国の衛星を隔離し、標的にする方法を示した。

中国も同様の訓練を実施しており衛星編隊機動をテストし、衛星を攻撃し、破壊することができる指向性エネルギー兵器を開発している。

ASAT(対衛星兵器)の脅威に対する懸念が高まる中、アメリカは宇宙ベースのセンサー、妨害耐性のある衛星通信、衛星防御システムを含む一連の対ASAT技術を先駆けて開発している。

アメリカ合衆国は2022年4月、ASAT(対衛星兵器)実験を禁止する初めての宇宙先進国となり、、ASATを中心とした軍拡競争やさらに大規模な宇宙デブリの発生リスクを縮小するための模範となることを目指している。

ホワイトハウスのファクトシートには、この決定を発表する中で、「ASAT(対衛星兵器)試験は宇宙の長期的な持続可能性を脅かし、すべての国による宇宙の探査と利用を危険にさらす」と説明がされている。

1967年の外空条約(OST)は、ロシアを含む114カ国が署名しており、宇宙における核兵器の配備を禁じ、宇宙での軍拡競争を防ぐことを目的としているが、すべての軍事活動を宇宙で禁止するものではなく、衛星インフラへの現代的な脅威には対応しきれていないと思われる。

変化するリスクに対応するため、NATO加盟国は協力体制を強化している。ルッテ事務総長は、情報共有、国家宇宙司令部の設立、そしてより小型で機動力があり、強靭な衛星の開発といった取り組みを挙げた。

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