戦略的課題

英国の次なる安全保障の最前線は北大西洋の海底にある

ロシアが海底ケーブルや潜水艦の航路への探りを強めるなか、英国の古くからの海洋国家としての役割は、再びNATOの安全保障の中核となりつつある。

2026年3月10日、イングランド南岸のポーツマス海軍基地(HM Naval Base Portsmouth)を出港するイギリス海軍の45型デアリング級防空駆逐艦「HMSドラゴン」。同艦は、Serco Marine Servicesが運航するタグボートに先導されていた。[Justin Tallis/AFP]
2026年3月10日、イングランド南岸のポーツマス海軍基地(HM Naval Base Portsmouth)を出港するイギリス海軍の45型デアリング級防空駆逐艦「HMSドラゴン」。同艦は、Serco Marine Servicesが運航するタグボートに先導されていた。[Justin Tallis/AFP]

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英国の地理的条件は再び戦略的重要性を増している。というのも、その位置によって北大西洋と北極海の海域へ直接アクセスできるからだ。

長年にわたり、この国の海洋上の位置は、ごく当たり前の背景として扱われることが多かった。すなわち、北米とヨーロッパの間に位置し、北海、北極圏への接近ルート、そしてより広い大西洋に近接する島国としての存在である。

その地理的条件は、もはや歴史の遺産というよりも、安全保障上の要件として捉えられるようになっている。

ロシアのウクライナに対する戦争によって、NATOの東側正面に再び注目が集まっている。しかし、同盟の北方ルートや海上交通路も同様に重要である。増援部隊、潜水艦、エネルギー網、そしてデータ通信ケーブルは、いずれも英国が長年にわたり中心的な役割を果たしてきた海域を通過している。

2025年3月20日に撮影された写真。イングランド北西部バロー=イン=ファーネスにあるBAEシステムズの工場の外に停泊する原子力潜水艦「HMSアガメムノン」。周囲には同社の職員やイギリス海軍の関係者の姿が見える。[Oli Scarff/POOL/AFP]
2025年3月20日に撮影された写真。イングランド北西部バロー=イン=ファーネスにあるBAEシステムズの工場の外に停泊する原子力潜水艦「HMSアガメムノン」。周囲には同社の職員やイギリス海軍の関係者の姿が見える。[Oli Scarff/POOL/AFP]

次なる安全保障の最前線は、陸上からは見えない場所にあるのかもしれない。それは北大西洋の海底かもしれない。

ケーブルが標的となる

海底インフラは、現代の国力を支える最も重要でありながら、最も目に見えにくい要素の一つとなっている。

海底ケーブルは、インターネット通信、金融取引、政府の通信、そして軍事データを運んでいる。パイプラインやエネルギー接続網は欧州経済を支えている。港湾、修理施設、海軍基地は、軍事的な機動力と国家の強靱性を結びつけている。

それによって、海底は戦略的な空間となっている。

損傷したケーブルは事故のように見えるかもしれない。不審な船舶にも商業上の説明がつくかもしれない。潜水艦は人々の目に触れない海中で活動することができる。そうした曖昧さこそが、この脅威への対処を難しくしている。

英国はつながっているがゆえに脆弱なのである。

英国の経済は、デジタル通信網とエネルギー輸送ルートに依存している。英国の安全保障は、NATOの増援部隊の移動や潜水艦の運用のために北大西洋の航路が開かれた状態に保たれることにかかっている。同国の地理的位置は、北米と欧州を結ぶ海上交通路の近くとなる。

だからこそ、海底の安全保障は技術的な問題から防衛上の優先課題へと位置づけが変わったのである。

英国の「戦略防衛見直し(Strategic Defence Review)」は、重要な海底インフラの防護と北大西洋の安全確保において、イギリス海軍により明確な役割を与えた。ロンドンはまた、有人艦艇、潜水艦、自律システム、航空機、人工知能を組み合わせて海中での探知能力と防護能力の向上を図る計画である「Atlantic Bastion」も打ち出している。

理屈は単純だ。

どの海軍であっても、すべてのケーブルやパイプラインを常時監視することはできない。しかし、センサー、哨戒活動、ドローン、そして同盟国間の情報共有によるより優れたネットワークがあれば、敵対的な活動を隠し通すことをより困難にできる。

英国は北に目を向ける

北大西洋は、常にNATOにとって重要な意味を持ってきた。

冷戦期には、北大西洋は北米からの増援部隊が欧州へ到達するためのルートだった。また、潜水艦の追跡や対潜水艦戦の主要な舞台でもあった。

その役割は戻りつつあるが、その形はより複雑になっている。北極圏の航路、GIUKギャップ、そして海底をめぐる競争が、再び同盟の計画立案を左右しているからだ。

今日の課題は、ソ連時代のような海軍同士の競争だけではない。そこには、海底ケーブル、エネルギーシステム、グレーゾーン活動、サイバー上のリスク、自律型プラットフォーム、そして直接的な衝突を引き起こさずに同盟側の警戒態勢を試そうとするロシアの動きも含まれている。

英国にとって、それは責任であると同時に機会でもある。

イギリス海軍は、対潜水艦戦、原子力潜水艦の運用、そして海上哨戒における各国との協力について豊富な経験を有している。また、英国は北方海域において、ノルウェー、米国、その他のNATO同盟国と緊密に連携している。

そうした協力関係が重要なのは、ロシア北方艦隊が依然としてモスクワの軍事態勢の中核を担っているからである。その潜水艦、長距離ミサイル、そして北極圏から大西洋へ至る接近ルートは、NATOの計画立案に大きな影響を与えている。

英国は、その課題に単独で対処することはできない。しかし、その対応を取りまとめる役割を果たすことはできる。

それは、対潜哨戒機、海底センサー、自律型水中システム、フリゲート艦、修理能力、そして情報共有への投資を意味する。また、港湾や海底ケーブルを、空軍基地や弾薬庫と同じくらい真剣に防護することも意味する。

ここでの教訓は、英国が東欧から目を背けるべきだということではない。欧州の防衛は海によって結びついているということだ。

ウクライナでの戦争は、兵站、インフラ、そして産業の持久力の重要性を示した。北大西洋は、同じ論理が海洋という形で現れたものなのである。

もし海底ケーブルが切断され、エネルギーシステムが混乱し、あるいは増援ルートが脅かされれば、その影響は海の向こうにとどまらず、はるか広範囲に及ぶだろう。

だからこそ、英国の海洋国家としての役割は、もはや過去から受け継がれた任務ではない。それは現在の戦略的必要性なのである。

英国は、大西洋を支配しなければ重要な存在になれないわけではない。航路を開かれた状態に保ち、海底を監視し、そして同盟を結びつけ続けることに貢献すればよいのである。

NATOにとって、英国が価値を持つのは、その軍事力だけでなく、その地理的位置ゆえでもある。

地図は再び重要性を増している。そして、その地図の上に英国は位置している。

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