世界危機レポート
復興までの長い道のり - ガザの人道問題と経済の見通し
ガザでは復興に向けて714億ドル規模の途方もない取り組みが必要となるが、専門家は、持続可能な平和の実現の方が大きな課題になると警鐘を鳴らしている。
![2026年5月31日、ガザ市内の港湾で、イスラエル軍の作戦が行われた現場を確認する人々。[MAJDI FATHI / NurPhoto via AFP]](/gc7/images/2026/06/24/56397-gaza1-370_237.webp)
筆者:オルハ・ヘンビク |
ガザ全域で、巨大な穴、破壊された道路、焼け焦げた建物の外壁がありふれた光景となっているが、苦しむ住民に人道支援が届くことはめったにない。
2023年10月7日のハマスによる攻撃と、それに続くイスラエルの全面的な軍事作戦により、パレスチナ自治区のこの地域では人道的大惨事が発生している。一方、ヨルダン川西岸地区では、統計開始以来最も深刻な経済的衰退が起きている。
この破壊された地域の復興は極めて困難な作業となるだろう。しかし、この地域に平和と安定をもたらすことよりは容易だと考える人も多い。
失われた数十年
2025年10月10日、イスラエルと、イランの支援を受ける過激派パレスチナ・イスラム主義運動「ハマス」との間で、ガザ地区における停戦が発効した。
![2026年6月1日、ガザ市のパレスチナ・スタジアムで、仮設テントの横に立ち、ノートパソコンを操作する教師。[Ahmed Al Arini / Middle East Images / AFP]](/gc7/images/2026/06/24/56398-gaza2-370_237.webp)
この停戦は、米国のドナルド・トランプ大統領の仲介によって成立したものだ。一部住民が自宅に戻る中、専門家は破壊による被害額を算出した。
ガザ地区の物的損害は352億ドルと推定される。これに、経済的損失と社会的損失がさらに227億ドル上乗せされる。紛争の過程で、住宅建設、医療、教育、貿易、農業など、経済のあらゆる産業に甚大な影響が及んだ。住宅37万1000戸以上と病院の半数以上が全壊し、学校のほぼすべてが全壊または一部損壊した。
この紛争により、7万1,000人のパレスチナ人が死亡した。17万1,000人以上が負傷し、瓦礫の下に取り残された行方不明者も多数いる。
国連貿易開発会議(UNCTAD)の報告によると、「ガザを2023年10月以前の生活水準まで回復させるには、ここから数十年かかるだろう」とのことだ。
そして、これは理想的なケースでの話にすぎない。
これを実現するには、膨大な額の対外援助に支えられた極めて高い成長率が必要となる。
2023年から2024年にかけて、ガザの経済は87%縮小し、一人あたりの国内総生産(GDP)は161ドルまで落ち込んだ。これは世界最低レベルの数値である。
制度の強化
2026年5月に世界銀行、国連、EUが算出した損害の規模に関する最新の見積もりによると、ガザ地区の復興と再建には総額で約714億ドルが必要とされている。
米国に加え、多くのアラブ諸国や欧州諸国が、戦争で荒廃した地域の再建を支援する意向を示している。
国連開発計画(UNDP)の特別代表を務めるヤコ・シリアーズ氏は、この点について「すでに非常に良い兆候が表れている」と述べた。
世界銀行の報告書では、支援国は資金提供に加え、公共サービスの強化やインフラの復旧、特にエネルギーや水道インフラの分野で支援できるとしている。
同報告書は、医療制度と教育制度にも焦点を当てている。将来的に、優先度の高い分野に民間投資を呼び込むことも可能だという。
世界銀行の報告書には、「最終的に、パレスチナ自治区の復興は、資金源だけではなく、経済システムの予測可能性の回復、制度の強化、そして断続的な紛争の影で育った世代のための機会の拡大にかかっている」と記されている。
安全保障が焦点となる
もう一つの課題は、長期化する戦争によって過激化が進み、近い将来に歩み寄りや平和的解決が実現する可能性が低くなっていることだ。
平和評議会のガザ担当上級代表を務めるニコライ・ムラデノフ氏は「現状の悪化が続き、それが恒久化してしまうリスクがある。つまり、ガザが分断され、ハマスがガザ地区の半分以下の地域で、200万人の人々に対して軍事的かつ行政的な支配を続けるという状況になる」と述べている。
そうなれば、ガザの次の世代がテントの中で育つことになり、パレスチナ国家の実現に向けた取り組みが妨げられるだろう。
苦しむのはガザの人々だけではない。イスラエルも安全保障上の不安を抱えることになる。
ムラデノフ氏は、こうした今後の可能性について「イスラエル人、パレスチナ人、そしてこの地域全体が警戒すべき事態だ」と述べ、関係者に結束を呼びかけた。
ガザでの戦争は、中東全体の安全保障体制にも影響を及ぼしている。
外交研究所の報告によると、ガザから大勢の住民が避難した場合、エジプトとヨルダンが特に大きなリスクにさらされるという。
こうした動きが実際に起きれば、これらの国々で国内の過激派勢力が再び台頭する可能もある。ガザでの紛争と危機は依然として続いているが、国際舞台ではパレスチナ問題に関連して緊急性のある新たな課題が浮かび上がり、パレスチナ選挙も外交議題として再び取り上げられるようになった。