戦略的課題

安全な避難港はない――中国のラテンアメリカ港湾プロジェクトが抱える戦略的リスク

ラテンアメリカとカリブ海地域の港湾への中国の関与は、国際的利益と地域の安定を損なう可能性のある脆弱性を生み出している。

2025年3月12日、パナマシティのパナマ運河の入り口にあり、香港に本拠を置くCKハチソン・ホールディングスが管理するバルボア港の様子。[Martin Bernetti/AFP]
2025年3月12日、パナマシティのパナマ運河の入り口にあり、香港に本拠を置くCKハチソン・ホールディングスが管理するバルボア港の様子。[Martin Bernetti/AFP]

Global Watch |

ラテンアメリカ・カリブ海地域(LAC)の港湾に対する中国の影響力の増大は、この地域の経済的および地政学的状況を再構築しつつある。

投資、建設、運用管理を通じて、中国企業はこの地域のダイナミックな海洋経済をつなぐ重要なインフラに深く関与している。

これらのプロジェクトは商業的な機会をもたらす一方で、重大な戦略的リスクも伴っている。情報収集からサプライチェーンの影響力行使に至るまで、中国によるLAC港湾への関与は、国際的な利益や地域の安定を損なうおそれのある脆弱性を生み出している。

中国のLAC港湾への投資は、単なる貿易目的ではなく、影響力拡大が目的である。北京が近い将来に米国沿岸に公然と海軍基地を設置する可能性は低いものの、港湾運営を掌握することでより巧妙な優位性を得られる。中国の影響下にある港湾は、米海軍の動きに関する情報収集を可能にし、海上物流データへの優先的アクセスを提供し、危機時には作戦を妨害することさえ可能にする。

最近の紛争は、民間インフラが秘密の軍事作戦にどのように転用されるかを示している。例えば、ウクライナとイランでは、輸送コンテナから発射されたドローンが精密攻撃に使用されている。中国は輸送コンテナ型のミサイルシステムを開発しており、中国の影響下にある港湾がそのような能力の秘密配備を促進する懸念が高まっている。

経済的影響力と戦略的脆弱性

中国の港湾支配は、軍事的リスクにとどまらず、地域のサプライチェーンに対する影響力を与え、中国政府が貿易関係を再構築し、経済的影響力を深めることを可能にしている。戦略的な立地と中国の関与の程度により、ジャマイカのキングストン港やメキシコのマンサニージョ港やベラクルス港などは特にリスクが高い。

リスクは直接所有権の有無によらない。中国企業が建設や設備供給に関与している港でさえ、長期的な依存関係を生み出す可能性がある。例えば、ファーウェイやZTEなどの中国企業の技術が複数の港に設置されており、情報収集のための潜在的なバックドアに対する懸念が高まっている。

中国企業が運営する10の稼働中のLAC港湾のうち、7つは香港に本拠を置くCKハチソン社が管理している。同社は従来、商業主導と見なされてきた。しかし、北京による香港への支配強化と、民間企業に国家情報機関との協力を義務付ける2017年国家情報法により、ハチソン社の独立性に関する前提は揺らいでいる。

ハチソン社が最近発表したところ、LACの7つのターミナルすべてを含む43の海外港を米国主導のコンソーシアムに売却する可能性がある。しかし、この取引に対する中国の独占禁止法審査と、中国国有企業がこれらの港の株式の取得を目指しているとの報道は、中国政府が影響力を手放す準備ができていないことを示唆している。

リスクの軽減

南米諸国は、中南米の港湾における中国の影響力の増大に対抗するために断固とした行動を取る必要がある。ハチソンの売却のような港湾の買い戻しや買収を支援することは、市場主導型の手法で中国の影響力を弱める手段となる。

主要港湾での監視と検査プロトコルの強化は脆弱性を減らし、パートナー国の港湾当局を秘密裏に支援することで、監視活動や違法行為に対する耐性を高めることができる。

中国がラテンアメリカ・カリブ海地域で進める港湾プロジェクトは、単なる商業事業ではなく、危機の時に活用できる戦略的拠点である。

リスクは軍事的懸念を超え、経済的依存関係や地政学的影響にまで及ぶ。LAC港湾の安全性と独立性を確保することは、地域の優先事項であるだけでなく、地球規模の要請である。これらの港が戦略的搾取の窓口となる前に、今こそ行動を起こすべきである。

この記事は気に入りましたか?


キャプチャ *