国際問題

フィンランドの国境の町、ロシア軍増強に懸念

ウクライナでの戦争終結後、ロシアがフィンランドへの軍事行動を準備しているとの観測が広がっている。

カイヌー国境警備管区の副司令官トミ・ティルコネン中佐(右)と、同管区国境警備隊長ヨウコ・キンヌネン海尉が、2024年6月24日、フィンランドのクフモにあるバルティウス国境検問所で、新たに設置されたロシア国境のフェンス沿いを歩いている。[アレッサンドロ・ランパッツォ/AFP通信]
カイヌー国境警備管区の副司令官トミ・ティルコネン中佐(右)と、同管区国境警備隊長ヨウコ・キンヌネン海尉が、2024年6月24日、フィンランドのクフモにあるバルティウス国境検問所で、新たに設置されたロシア国境のフェンス沿いを歩いている。[アレッサンドロ・ランパッツォ/AFP通信]

AFP通信 |

ロシアにほど近いフィンランドの町で、国境の向こう側でのモスクワの軍備増強が伝えられる中、北欧の安全保への不安が高まっていると、地元住民がAFP通信に語った。

数十年にわたり軍事的非同盟を維持してきたフィンランドは、2023年にNATOに加盟し、ロシアと1,340キロメートル(830マイル)の国境を接している。

ニューヨーク・タイムズやフィンランド公共放送YLE、スウェーデン放送SVTなど複数のメディアが入手した最近の衛星画像から、フィンランド国境付近の複数の地点でロシア軍の軍事インフラが拡張されていることが分かった。

ウクライナでの戦争終了後、 ロシアがフィンランドに対する軍事行動の準備を進めているとの憶測が広がっている 。

ロシアによるウクライナへの全面侵攻を受けてフィンランドが2022年にNATOに加盟して以来、モスクワは繰り返しフィンランドに対して「報復措置」を警告してきた。

「現在、フィンランド国境付近に新たに部隊が編成され始めているなど、いくつかの新たな組織的変化を確認している」と、ウクライナ侵攻やNATO東部国境付近のロシア軍を分析しているフィンランド拠点のブラックバード・グループの軍事専門家、エミル・カステヘルミ氏はAFP通信に語った。

「ロシアは今もなお、フィンランドおよびNATOの東部国境周辺で建設を進め、準備を重ね、軍事訓練を続けている」と彼は述べた。

カステヘルミ氏は、ロシアのこうした動きは、フィンランドのNATO加盟への反応であると同時に、兵員の動員強化を図る試みであり、さらに昨年国境付近で復活したレニングラード軍管区の影響もあると指摘した。

フィンランド国防軍は5月、AFP通信に対し、「ロシアはウクライナでの戦争終結後により多くの兵力を投入できるよう、国境付近で軍事インフラの整備を進めている」と語った。

フィンランドのハッカネン国防相はAFP通信に対し、フィンランドは同盟国と連携しながら、ロシアの動向とその意図を注視し、分析している」と述べた。

さまざまなシナリオに備える

ヘルシンキから約600キロ北にある小さな国境の町クフモで、49歳のサムリ・プルッキネンさんは、食料品店の外で季節のベリーと野菜を販売していた。

彼は、地元住民の間でロシアとの新たな戦争への懸念が高まっていると語った。前回の戦争(1939〜1940年)では、フィンランドは国土の11%を失っている。

「長い平和な期間を経て、今ではもちろん誰もが戦争や戦争の脅威について話している」とプルッキネンさんはAFP通信に語った。

「平和な時代がもう終わりつつあるかのように感じられ、何か悪いことが起きる、あるいは今後数年のうちに戦争が起こるという脅威が常に感じられるのは、本当に悲しいことです。」

「私自身、それは非常に起こり得ることだと思います」と、彼は暗い予感を込めて付け加えた。

人口1万人に満たないクフモは、閉鎖されたバルティウス国境口岸から約60キロ離れた場所にある。

ロシアに近い立地であることは、常にフィンランドの東部国境地域に影響を与えてきた。

国境の両側に家族を持つ地元住民も多く、2022年以前は観光や越境貿易が重要な収入源となっていた。

「日々の生活の中で恐れを抱えながら過ごすのは大変なので、それほど心配はしていません」と、匿名を希望した67歳の男性は語った。

「でも、次の世代、自分の子どもや孫たちの将来を考えると、やはり将来が心配です。」

閉ざされた国境

フィンランドは、ロシアによる「移民の利用」を通じた越境からの不安定化を防ぐため、200キロに及ぶ国境フェンスの建設を進めている。

フィンランドは2023年12月、ビザなしで約1000人の移民が押し寄せたことを受け、ロシアとの国境を当面の間閉鎖した。ヘルシンキ当局は、この入国急増はロシア当局による意図的な仕掛けだと指摘しているが、モスクワはこれを否定している。

クフモを含むカイヌー国境警備管区の副司令官トミ・ティルコネン氏は、国境警備隊が東部国境沿いの動向を毎日監視しており、「ロシア側の状況についても非常に最新の情報を入手している」と述べた。

「不安に感じる必要はありません。状況は完全にフィンランド国境警備隊の管理下にあります」と彼は、緑豊かな森林に囲まれたバルティウス国境検問所を訪れた際、AFP通信に語った。

「我々はさまざまなシナリオに備えて準備を進めています」とティルコネン氏は述べたが、「作戦上および機密に属する」詳細については明かせないとしている。

フィンランドはNATO加盟後、軍事投資と戦備態勢を強化するとともに、国民に対しても民事防衛の備えを高めるよう呼びかけている。

「即時の脅威はない」

北欧の国であるフィンランドは、NATOが掲げる国防費GDP比5%の目標を支持しており、安全保障上の脅威に対処するため、自らの国防軍の改革を開始している。

クフモを親戚の訪問で訪れていたピルヨ・ラシンカンガスさんは、国境閉鎖やフェンス建設の決定を支持すると語り、「それが私に安全感を与えてくれている」と述べた。

「それでもまだ少し前向きでいようとしています。少なくとも状況がさらに悪化することはないように願っています」と彼女は話した。

「もちろん、家族とは今後どうなるかを話し合っています。なぜなら、常に暗い見通しが次々と現れてくるように感じられるからです」と、54歳の彼女は付け加えた。

アナリストのカステヘルミ氏は、ロシアの軍事活動の活発化は、フィンランドの安全保障に対して即時の脅威を構成するものではなく、軍事攻撃の準備を示しているわけでもないと指摘した。

フィンランドのアレクサンドル・スタブ大統領は5月のCNNとのインタビューで、国境沿いのロシア軍の基地は新たなものではなく、「通常の兵力の集結が行われている」にすぎないと述べ、安全保障上の懸念はないと説明した。

「最も重要なのは、ウクライナでの戦争が終わった後、何が起こるかということです」とカステヘルミ氏は述べた。

「例えば、ウクライナでの軍事作戦が終了した後もロシアが兵士たちを除隊させたり、動員解除したりしないような事態になれば、それは非常に懸念される事態だ」と語った。

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