国際問題

ウクライナ支援を巡り、モスクワのハイブリッド戦術がイタリアを標的に

ロシアはイタリアを不安定化させるため、外交的挑発、国家支援によるプロパガンダ活動、さらにはサイバー攻撃とされる行為を行っている。

ロシアの侵攻から3年が経過した2月23日、ウクライナ市民がローマ中心部でウクライナへの継続支援を訴えるデモを行った。 【アンドレア・ロンキーニ/ヌールフォト=AFP】
ロシアの侵攻から3年が経過した2月23日、ウクライナ市民がローマ中心部でウクライナへの継続支援を訴えるデモを行った。 【アンドレア・ロンキーニ/ヌールフォト=AFP】

トニー・ウェソロウスキー記者 |

そのハイブリッド戦術を強化しており、クレムリンはイタリアに対しては、偽情報キャンペーンやサイバー攻撃、外交的対立などを組み合わせ、ローマの親ウクライナ姿勢を揺るがし、欧州・大西洋同盟諸国に亀裂を生じさせようとする動きが見られた。

イタリアは軍事的・財政的にウクライナ最大の支援国ではないものの、ロシアの標的となっている。その背景には、セルジオ・マッタレッラ大統領とジョルジャ・メローニ首相がウクライナ支持を公然と表明していることがある。特にメローニ首相は、NATOとの密な同盟関係を結んでいることもあり、多くの欧州の右派指導者とは一線を画している。

NATOおよび大西洋をまたぐ同盟関係への深い関わりが 「イタリアがウクライナへの強化な支援と、イタリアを『モスクワの照準』にさらす結果となっている」と、国際政治を専門とする上級アナリスト、エマヌエーレ・ロッシ氏は、ワシントン拠点のシンクタンク『欧州政策分析センター(CEPA)』が3月5日に公開した記事の中で指摘している。

ロッシ氏によれば、「ロシアはイタリアを不安定化させるために、外交的挑発や国家主導のプロパガンダ活動、さらにはサイバー攻撃の疑いがある行為を含む工作を展開しており、こうした動きはウクライナ侵攻をめぐる欧州の結束を弱めようとするクレムリンの広範な戦略の一環だ」という。

イタリア大統領への口撃

ここ数か月、イタリアとロシアの間の緊張は高まっている。3月13日、イタリアのアントニオ・タヤーニ外相は、マッタレッラ大統領に対するロシア外交団からの『繰り返される口撃』を受け、ロシア大使を呼び出したと明らかにした。

この措置は、ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官が、マッタレッラ大統領がロシアの核の脅威を批判した後、彼が『嘘と偽情報』を広めていると非難した発言を受けたものだ。

ザハロワ報道官は2月、マッタレッラ大統領がロシアのウクライナ侵攻をナチス・ドイツの侵略と比較したことに対し、「『歴史的に不適切で明らかに根拠のないたとえ』を引き合いに出した」と非難した。

マッタレッラ大統領は、「ロシアの現在のウクライナに対する侵略は『ヨーロッパにおけるにおける第三帝国の計画と同じ性質』である」と述べた。

ロッシ氏は、「ロシアのプロパガンダは、メローニ政権をワシントンに従属するものとして描き、イタリア国内の政治的分裂に利用しようとしている」と述べた。

また同氏、「国家支援のメディアやSNSキャンペーンは、ウクライナへの姿勢に批判的な反対意見を増幅させ、偽情報を拡散して公衆の信頼を損ない、イタリアのNATOおよびEUとの足並みを疑問視させる」とも指摘した。

イタリアの諸機関は、ロシア関連の直接的なサイバー攻撃に直面している。2月、イタリアのメディアは、親ロシア派のハッカーグループ『Noname057(16)』が、銀行や空港、地域行政のウェブサイトにサイバー攻撃を仕掛けたと報じた。

モスクワにとって、イタリアのウクライナへの軍事支援は依然として争点となっている。イタリアはウクライナに、弾道ミサイルを迎撃する能力を持つフランコ・イタリア製のミサイル防衛システム『SAMP/T(MAMBA)』を2基提供した。しかし、3月14日、イタリアの『コリエレ・デラ・セラ』紙は、これらのシステムのミサイルがほぼ消耗し尽くされていると報じた。

イタリアにとどまらず、ロシアのアフリカでの活動はさらなる懸念を呼んでいる。モスクワの地中海、アフリカの角、紅海、サヘル地域での勢力拡大は、イタリアの戦略的利益に影響を与えていると、イタリアのニュースサイト『Decode39』は2月に報じた。

ロッシ氏は、「ロシアはアフリカの傭兵やその他の手段を活用することで、イタリアが伝統的に関与してきた地域へ進出している」と述べた。

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