国際問題

紅海、恒常的な海運リスクと化す

攻撃が減少したとしても、紅海をめぐる不確実性は今や世界の貿易、保険、そして海軍の運用計画に影響を及ぼしている。

パナマ運河に進入する東京船籍のコンテナ船「ワン・コントリビューション」号の航空写真=2026年4月21日、パナマシティ(Martin Bernetti/AFP)
パナマ運河に進入する東京船籍のコンテナ船「ワン・コントリビューション」号の航空写真=2026年4月21日、パナマシティ(Martin Bernetti/AFP)

Global Watch |

海運会社、保険会社、各国海軍、エネルギー商社はもはや、バブ・エル・マンデブ海峡からスエズ運河に至る航路を、紛争により一時的に中断されるだけの通常の航路と見なすことはできない。リスクは恒常化しており、攻撃が鈍化・停止してもなお続く。

これが極めて重要なのは、紅海がアジア・欧州・地中海を結ぶ主要な動脈の一つだからだ。船舶が同海域を回避すれば、航行距離は延び、燃料費はかさみ、運航スケジュールは遅延し、イエメンから遠く離れた港湾もそのあおりを受ける。

脅威はもはや、次のミサイルやドローンだけにとどまらない。世界の海運の意思決定に今や潜む不確実性こそが、真の脅威である。

リスクの常態化

紅海危機の最盛期以降、フーシ派は同じペースで商船への攻撃を継続しているわけではない。しかし、国境を越えて非国家主体が影響力を拡大させている安全保障環境では、その脅威がなくなったわけではない。

投影されたホルムズ海峡の地図の上に表示されるMaerskのロゴ=2026年3月3日、フランス・クレテイユ(Samuel Boivin/NurPhoto/AFP)
投影されたホルムズ海峡の地図の上に表示されるMaerskのロゴ=2026年3月3日、フランス・クレテイユ(Samuel Boivin/NurPhoto/AFP)

米海事局は3月、紅海、バブ・エル・マンデブ海峡、アデン湾、アラビア海および周辺海域において、同勢力が商船への脅威となり続けていると警告を発した。ガザ停戦後に攻撃が小康状態にあるにもかかわらず出された警告である。

問題なのは、海運が安心感の上に成り立っているという点だ。

船舶運航事業者が航路を変更するにあたり、攻撃が確実に起こるという確証は不要だ。乗組員や保険会社、荷主、港湾のスケジュールに懸念を抱かせるのに十分なリスクが存在すればよい。だからこそ、単なる脅威であっても貿易の流れを大きく変え得るのだ。

ロイターが6月に報じたところによると、イランと連携するイエメンのフーシ派は、イスラエルとイランの衝突再燃を受け、紅海においてイスラエル関連船舶対し再び威嚇行為を行ったという。保険業界筋によれば、当時の紅海における戦争危険保険料は船舶価値の約0.3%だったが、こうした料率は急速に変動し得る。

その不確実性は、さまざまな判断に影響を及ぼしている。

情勢が改善すれば紅海航路に復帰する船舶もある一方、アフリカ大陸南端の喜望峰回りを継続する船舶もある。海運大手のMaersk社は今年初め、可能な限りスエズ運河経由の航路を優先してきたが、その後、紅海情勢の制約から一部の運航を喜望峰回りに変更した。

こうした断続的な状況は、今やリスクの一部と化している。

紅海は単純に閉鎖されているわけではない。極めて不安定な状態にあり、企業は契約、燃料計画、到着予定、保険付保において柔軟性を持たせざるを得ない状況にある。

そのことが、この危機の解決を一段と困難にしている。

航路に伴うコスト

経済への影響は海運会社にとどまらず、広範に及んでいる。

航海の長期化は燃料消費の増大を招き、船舶をより長期間拘束し、利用可能な輸送力を低下させる。遅延は小売業、製造業、エネルギー供給、食料品出荷に広く影響を及ぼす。コストは必ずしも即座に表面化するわけではないが、サプライチェーンを伝って波及していく。

国連貿易開発会議は危機の初期段階で、紅海での混乱が他の海運航路への圧力と相まって、船舶が長距離航路を余儀なくされることで、コストの押し上げや納期遅延、排出量の増加を招く恐れがあると警告していた。

同じ論理が今も当てはまる。

船舶が紅海を回避しても、世界の貨物が失われるわけではない。失われるのは時間と効率、そして予測可能性だ。世界貿易において、こうした損失は決して軽視できない。

紅海はまた、海運リスクのより広範な構図とも結びついている。

ホルムズ海峡、黒海、パナマ運河、南シナ海はすべて、海上の要衝がいかに戦略的な脆弱性となり得るかを示している。航路の迂回に関する最近の学術研究は、こうした混乱は静的な事象ではないと指摘する。船舶が長距離航路をたどり、後続の寄港を逃すことで、時間差を伴う損失を生み出すのだ。

それこそが、報道が下火になってもなお紅海リスクが根強く残る理由を物語っている。

この航路は単なる輸送路にとどまらない。世界のインフレ、エネルギー、安全保障の構図の一部を成している。イエメン近海での混乱は、アジアの運賃、欧州の納期、そしてロンドンの保険料にまで波及し得るのだ。

各国政府にとって、対応は容易ではない。

海上パトロールでリスクを軽減することはできても、脅威の政治的根源を排除することはできない。空爆により発射拠点の機能を削ぐことは可能でも、フーシ派の海運妨害能力を根絶できるわけではない。外交努力で緊張を緩和できても、地域紛争によって瞬く間に再燃しかねない。

つまり、各国が事態の激化を抑えようとする一方で、民間セクターは情勢不安を前提とした計画を立てる必要があるということだ。

その結果、これが新たな常態となった。

海運各社は今や、紅海を安全が保証された近道とは見なさず、常に情勢評価を要する航路として捉えている。保険会社は日々リスクを織り込んだ保険料を算定し、各国海軍は引き続き警戒を続けている。荷主は港湾の混雑と同様、地域情勢を注視している。

紅海はその重要性を失ったわけではない。失ったのは予測可能性だ。

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