防衛動向

湾岸諸国の戦略的転換:経済多角化、外交、防衛

エネルギー収入を原動力に、サウジアラビア、UAE、カタールは経済と外交の変革を推進し、自立した世界大国となることを目指している。

サウジアラビアの治安部隊隊員らが2026年5月21日、軍事パレードに参加した。[ZAIN JAAFAR / AFP]
サウジアラビアの治安部隊隊員らが2026年5月21日、軍事パレードに参加した。[ZAIN JAAFAR / AFP]

著:オルハ・ヘムビク |

サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールは、石油・天然ガス収入を単に国庫を潤すためだけに充てる時代は終わった。

こうした潤沢な資金の投入は、国際舞台における同諸国の地位向上を後押しし、中堅国としての存在感を一段と強めている。

湾岸諸国はもはや、大国に従属するパートナーの役割に甘んじるつもりはない。むしろ、自立したパワーセンターとなることを目指している。その実現に向け、経済発展、積極的な外交展開、そして安全保障の強化を同時に推進している。

サウジアラビアの戦略再調整

女性の権利拡大を図り、世界への開放路線に乗り出したサウジアラビアは、新たな国家形成を徐々に進めている。

UAE外務省国務相のヌーラ・ビント・モハメド・アル・カービー氏とUAE対外貿易相のサニ・アル・ゼユーディ氏は2026年5月12日、ダマスカスでの第1回シリア・UAE投資フォーラム2日目に到着し、出迎えを受けた。[LOUAI BESHARA / AFP]
UAE外務省国務相のヌーラ・ビント・モハメド・アル・カービー氏とUAE対外貿易相のサニ・アル・ゼユーディ氏は2026年5月12日、ダマスカスでの第1回シリア・UAE投資フォーラム2日目に到着し、出迎えを受けた。[LOUAI BESHARA / AFP]

同国は戦略的自主性を実践し、その軸足をますますグローバルな利害へと移している。現在、サウジアラビアは国家主導の包括的な社会経済転換プログラム「サウジ・ビジョン2030」の推進を継続している。

同プログラムは2016年、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の主導で発表された。

サウジアラビアにとって、これは大胆な資本主義改革プログラムであり、同国の経済・社会の変革にとどまらず、国際社会における同国の地位そのものの変革をも目指すものである。

「我国は強力な投資力を有しており、これを活用して経済を活性化させ、歳入の多角化を図る」。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、同プログラムのウェブサイトに掲載された声明でこう述べた。

中国はサウジアラビアにとって最大の石油輸出先である。中国は同国において最も積極的な外国投資国でもあり、2023年の新規事業投資の58%を占めている。外国投資の供給源としては米国が2番目に大きい。リヤドの経済的利益にとって、ロシアとの石油採掘における戦略的協力も引き続き重要である。

サウジアラビアの公式データによると、2025年第4四半期の外国投資は前年同期比90%急増し、484億サウジアラビアリヤル(129億ドル)に達した。

観光、再生可能エネルギー、技術などの分野も海外投資家に対して開放されている。中でも主要な大型プロジェクトとして、オラクルは同国のクラウドインフラに15億ドルを投資し、アマゾン・ウェブ・サービスは53億ドル超のプロジェクトを展開。グーグルも総工費約100億ドル規模の人工知能(AI)センター建設に参画している。

ルーシッド・モーターズも重要な役割を担っている。サウジ公共投資基金は、国内での電気自動車生産を促進するため、同社に数十億ドルを投じている。

さらに、現代自動車は5億米ドル超を投じて自動車工場を建設している。

専門家によると、リヤドは経済面に加え、外交関係の多角化にも積極的に取り組んでいる。同王国は中東・北アフリカ地域で精力的に活動し、グローバルサウス諸国とのパートナーシップに活路を見出している。一方で、米国、中国、ロシアといった大国との関係においては、均衡の維持にも努めている。

「米国と中国との関係を排他的なものとは見ていない。むしろ互いに補完し合っていると考えている」。サウジアラビアのハリド・アルファリハ投資相はこう述べた。

UAEとカタール:東方への注力

アラブ首長国連邦(UAE)は、サウジアラビアよりも小規模で機動的な隣国であり、地域における競争優位の確立にしのぎを削っている。

スーダン、リビア、イエメンなど一連の地域紛争において、両国は度々対立する陣営に分かれてきた。UAEは、域内の主要な輸出・物流拠点の座を巡り、サウジアラビアの最大の競争相手となっている。

両国間の競争は今後一層激化するとみられる。

石油に依存する湾岸協力会議(GCC)加盟国の中でも、UAEは経済の非石油部門の多角化で顕著な成果を上げている。同国は、人材、技能、新技術を基盤とする社会の構築を掲げている。

UAEの経済成長を背景に、「東方重視政策(ルック・イースト政策)」が打ち出された。これは、同国が経済・外交政策の焦点を欧米からアジアへと徐々に移行させる戦略である。

同国はアジアへエネルギーを輸出する一方で、アジアからの資本を積極的に誘致し、中国主導のインフラプロジェクトに参画するとともに、インドとの貿易を拡大させている。石油輸出国機構(OPEC)およびOPECプラスからの離脱後、アブダビは中東・アフリカ地域において独自の勢力圏を築き上げている。

その目標は、域内のエネルギー輸出国から自立したグローバルプレイヤーへと転換することにある。

カタールもまた、エネルギーを外交推進の基盤とするもう一つの湾岸国である。近年、ドーハはガザを巡る交渉やロシア・ウクライナ間の人道協定、アフリカ地域での仲介など、多岐にわたる外交課題に積極的に関与してきた。

カタールは最も近い隣国との間で複雑な関係にある。UAEとサウジアラビアは、カタールの活発な動きを過度な介入と見なし、さらには自国への挑戦であるとすら捉えている。

液化天然ガスインフラへの早期投資と、アジア・欧州の主要パートナーとの長期契約により、カタールは近隣諸国と同様の経済的圧力にさらされることなく、独自の地域政策を展開している。

カタールの潤沢かつ安価なエネルギーは、世界の技術と経済を大きく変革しつつある分野への進出を可能にした。現在、同国は湾岸地域における人工知能(AI)開発競争で、サウジアラビアやUAEへの追い上げを図っている。

5260億ドル規模の同国政府系ファンドからの出資に加え、資産運用大手ブルックフィールドとの合弁事業を通じて200億ドルを調達したQai社の発足は、この目標に向けた最も野心的な一歩となる。

戦略としての安全保障

安全保障は、UAE、カタール、サウジアラビアの経済安定、国際的影響力、長期的発展にとって最重要の価値である。

これを踏まえ、サウジアラビアは最大規模の軍事費を計上している。昨年の防衛費は700億ドルから800億ドルに上り、その規模は世界トップクラスである。

ウクライナは最近、サウジアラビア、カタール、UAEとの間でドローンに関する協定を締結した。同協定には、ドローンの共同生産や、より実効性の高い対ドローンシステムの開発が盛り込まれている。

ウクライナの専門家であり外交官でもあるヴァディム・トリュハン氏によると、ウクライナは全面戦争を通じてイラン製ドローン対策で独自の経験を蓄積しており、その知見は現在、世界的な関心を集めている。

トリュハン氏は「ウクライナにとって国家の存亡に関わる問題だったものが、湾岸諸国にとっては徐々に国家安全保障上の課題となりつつある。ドローン迎撃技術に加え、キーウは実戦で実証された防空戦術やインフラ防衛手法を提供できる」と指摘した。

湾岸諸国はサイバーセキュリティにも特に注力している。例えば、カタールは技術的ソリューションに加え、デジタルシステムやAIの革新を活用して防衛能力の強化を図っている。一方、UAEは重要インフラの防衛強化を目的とした国家サイバーセキュリティ戦略を推進している。

同戦略の一環として、同国は昨年、グーグル・クラウドと共同でサイバーセキュリティ卓越センターを開設した。

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