戦略的課題

中国の軍民両用という偽装工作 - 研究を名目に軍事計画を進める

中国は、民間の調査船や大学の研究室を軍事利用し、潜水艦や「キルウェブ」の運用に向けて海底マッピング活動を展開しているが、米国とその同盟国は依然として海底における絶対的な優位性を維持している。

2025年2月25日、西オーストラリア州に到着したUSSミネソタ(SSN 783) [Lt. Corey Todd Jones/U.S. Navy/DVIDS]
2025年2月25日、西オーストラリア州に到着したUSSミネソタ(SSN 783) [Lt. Corey Todd Jones/U.S. Navy/DVIDS]

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中国は、軍民融合戦略を通じて海洋科学を軍事的な手段に反映させることで、海洋生物学や地質学と海軍の戦術との線引きを曖昧にしている。

中国海洋大学が運用する「東方紅3号」などの調査船が実施する「泥質調査」では、実際には解像度の高い海底地図を作成する活動も行われている。この活動は、人民解放軍海軍の潜水艦作戦や対潜水艦作戦の計画を支援する活動の一環であり、取得した情報は軍事目的の航海活動に活用される。

これが、実際に行われている「軍民両用」という偽装工作である。

同大学には、海軍潜艇学院との深いつながりがある。そのため、研究の成果はすぐに軍事計画に活用され、科学的データから作戦における利点が生み出される。

ボーイング社の超大型無人潜水艦(XLUUV)「オルカ」の製造施設。2024年12月6日撮影。 [Chief Petty Officer William Spears/U.S. Navy/DVIDS]
ボーイング社の超大型無人潜水艦(XLUUV)「オルカ」の製造施設。2024年12月6日撮影。 [Chief Petty Officer William Spears/U.S. Navy/DVIDS]

その結果、中国人民解放軍(PLA)海軍の潜水艦の航行能力が向上し、「キルウェブ」の正確性が上がり、攻撃経路の自動化が進んだ。これらは、台湾をめぐる緊急事態や、第一列島線での対立が深まる航路に直接関係する能力である。

表向きは無害と思われる海洋調査活動は、実際には組織的な活動であり、詳細な海底地図の作成、水質の測定、そして対潜水艦作戦計画や海底センサーの配備に必要な環境情報の収集を目的としたものなのだ。

この軍民融合戦略は、有事の際に第一列島線の制約を軽減し、潜水艦や水上部隊に新たな形で行動の自由をもたらすという、中国の長期的な作戦の中核を成すものだ。

中国が科学と戦略を融合させたことで、海底活動の能力は明らかな勢いで強化されている。

こうした海底状況認識能力の向上を後ろ盾として事態が深刻化した場合、世界の半導体サプライチェーンに深く関わっている台湾経済は、すぐに深刻な混乱に直面することになるだろう。

優れたデータ処理能力

しかしながら、データそのものだけでは十分ではない。米国とその緊密な同盟国は、未処理の海洋情報から実用的な情報を生み出す能力において絶対的な優位性を有している。これは、効果的な潜水艦作戦の基盤となる重要な「頭脳」である。

AN/BQQ-10ソナースイートなどの高度な信号処理アルゴリズムを搭載した米国のバージニア級潜水艦は、現在の中国のシステムよりもはるかに効果的に、エビ、クジラ、およびその他の海洋生物による生物ノイズを除去することができる。

この優位性は、中国が現在積極的にマッピング活動を展開している複雑な水中環境において、特に重要だ。

オーストラリアと英国は、「AUKUS」の枠組みを通じてこの優位性をさらに拡大し、同盟国同士で相互運用性と水中活動能力を強化している

オーストラリアの哨戒機「P-8A ポセイドン」と、広範囲にわたる海底監視ネットワークにより、インド太平洋全域で強力な対潜水艦監視網が展開されている。また、同国は先進的な原子力潜水艦の運用に向けた準備を進めている。

英国は、高度な静粛性を誇るアステュート級潜水艦に加え、数十年にわたる精鋭部隊の作戦活動から積み上げられた高度なソナー技術やデータ処理技術を提供している。

そして、ボーイング社の「オルカ」のような超大型無人潜水艦により、同盟国全体の作戦範囲はさらに拡大している。

こうした無人潜水艦は、数か月間潜水状態を維持することができ、乗組員を危険にさらすことなく、自律的な偵察機や移動式の「スマート機雷」として機能するのである。

傍受を防ぐ通信

通信技術により、同盟の優位性はさらに強固なものになる。

「Sea Deep」などのプログラムを通じて開発された青緑色レーザーシステムを活用する衛星は、最大1Mbpsの高帯域幅データを潜水中の潜水艦に直接送信することができる。

全方向に放射されるため傍受されやすい従来の電波とは異なり、こうした放射範囲の狭いビームレーザーは、敵対勢力がその経路に直接位置していない限り、検知することは極めて困難だ。

競争の焦点は、情報収集ではなく、依然として情報の統合力と実行力にある。

地域の近隣諸国にとっては、こうした能力の強化は、紛争の脅威が依然として重大であり、さらなる防衛費の増加が必要になり、貿易や投資の流れに急激に混乱が生じて脆弱な経済が脅かされることにほかならない。

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