戦略的課題
ワグネル、惨敗の末マリから撤退 後任にクレムリン配下の別部隊
ロシアの準軍事組織によるマリでの残虐行為は、人権団体からたびたび非難されてきた。
![2023年7月27日、サンクトペテルブルクで開催された第2回ロシア・アフリカ首脳会議の歓迎式典にて、ロシアのプーチン大統領がマリ暫定政権の指導者アシミ・ゴイタ氏を出迎える様子。[パーヴェル・ベドニャコフ/AFP通信]](/gc7/images/2025/06/10/50747-putin_mali-370_237.webp)
Global Watch及びAFP通信 |
ロシアの マリにおける影響力が揺らぎつつある。悪名高いワグネル・グループが戦場での度重なる失敗を受け、撤退を開始した。
この撤退は、マリ軍およびロシアの傭兵がイスラム過激派との最近の衝突で大きな損失を被った直後に行われた。
5月下旬、アルカイダ系武装組織「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」の戦闘員がマリ中部の軍基地を襲撃し、数十人の兵士を殺害する壊滅的な攻撃を実施した。
マリ軍と行動を共にしていたロシアのワグネル傭兵も、死傷者に含まれていたと報じられている。
モロッコ拠点のシンクタンク「新南方政策センター」のサヘル地域専門家リダ・リヤムリ氏はAP通信に対し、大規模な損失がワグネルの任務終了につながった可能性があり、戦場での圧力がロシアに戦術的撤退を余儀なくさせたことを示唆していると述べた。
「マリ当局とワグネルの双方から正式かつ共同の発表がないことは、この突然の決定の背後に内部対立があった可能性を示している」とリヤム氏は述べ、「また、これはロシアによる同国での新たな関与の枠組みを示唆しているのかもしれない」と続けた。
外交・安全保障筋は6月8日、AFP通信に対し、ワグネル部隊はすでにマリでの活動を終了しており、その任務は現在、ロシア国防省の直轄となった新たな組織「アフリカ軍団(Africa Corps)」に引き継がれたことを確認した。
ワグネル関連のテレグラムアカウントが「任務完了。民間軍事会社ワグネルは帰還する」と投稿した。
クレムリンは今回の動きを再編成の一環と位置づけようとしているが、そのタイミングから見て、作戦の失敗によるやむを得ない組織再編である可能性が高い。
ロシア政府の公式説明― マリへの関与は軍事教官の派遣に限られるという主張 ― は、現地報道と依然として食い違っている。クレムリンの報道官ドミトリー・ペスコフ氏は6月9日、ワグネル撤退に関する質問を避け、代わりにアフリカ諸国との軍事協力を強化するという曖昧な説明を行った。
2020年と2021年のクーデターで政権を掌握したマリの暫定軍事政権は、旧宗主国フランスとの関係を断った。そして、政治的および軍事的支援を求めてロシアへと傾斜した。
残虐行為
ロシアは長らく、自国の正規軍を投入せずに軍事的目的を達成する手段としてワグネル傭兵を利用してきた。ワグネルの傭兵たちは、ロシアによるウクライナ侵攻初期においても重要な役割を果たした。
しかし、ロシアで最も知られた傭兵組織であるワグネルは、2023年8月に指導者エフゲニー・プリゴジンがモスクワに対する短期間の反乱の後、不可解な航空機墜落事故で死亡したことを受けて、解体され、再編された。
マリ政府はこれまでワグネルの存在を公式に認めたことはなく、一貫して「ロシア人教官」とのみ協力していると主張してきた。
2022年、フランスはマリの軍事政権との関係悪化とマリ国民の間で反仏感情の高ままったため、マリに駐留していた2,400人の部隊を撤退させた。
「クレムリンの支配は依然として続いている」と、サヘル地域の外交筋がAFP通信に語った。
「マリにいるワグネルの要員の多くはロシア出身であり、アフリカ軍団に統合され、北部の地方都市や首都バマコに引き続き配備されることになるだろう」
マリは過去3年以上にわたり、国内各地で数千人の命を奪ってきた反政府勢力との戦いにおいて、ワグネルに依存してきた。
「昨日はワグネル、今日はアフリカ軍団であっても、我々の連絡先は変わらない。それはロシアの中枢権力、すなわちクレムリンだ」と、マリの治安当局者は6月8日、AFP通信に語った。
ロシアの準軍事組織によるマリでの残虐行為は、人権団体からたびたび非難されてきた。
国連の報告書は、2022年3月にムーラで行われた反政府勢力掃討作戦において、マリ軍と外国人戦闘員が少なくとも500人の現地住民を処刑したと非難している。これに対し、マリの軍事政権は関与を否定している。
西側諸国は、外国人戦闘員はワグネルの傭兵だったと主張している。
昨年4月、マリ軍の駐屯地付近で遺体が発見された。これは、マリ軍とワグネルの準軍事部隊が多数の民間人(その多くがフラニ人)を拘束した数日後のことであった。