戦略的課題

クレムリン指導部の混乱の中、ロシア陸軍トップが解任

十名以上の軍および国防関係の高官が、汚職や職権乱用で起訴される。

2017年3月15日に撮影された、当時ロシア陸軍総司令官だったオレグ・サリュコフ大将。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、5月15日、ウクライナへの侵攻が続く中、軍上層部の有力人物を解任する最新の事例として、サリュコフ氏を更迭した。[Roberto Schmidt/AFP]
2017年3月15日に撮影された、当時ロシア陸軍総司令官だったオレグ・サリュコフ大将。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、5月15日、ウクライナへの侵攻が続く中、軍上層部の有力人物を解任する最新の事例として、サリュコフ氏を更迭した。[Roberto Schmidt/AFP]

GlobalWatch及びAFP通信 |

【モスクワ】ロシアのプーチン大統領による、長年ロシア地上軍を率いてきたオレグ・サリュコフ大将の解任は、ウクライナでの戦争が続く中、ロシア軍上層部における混乱を示す新たな兆候である。

サリュコフ氏の解任は、クレムリンによる大統領令を通じて5月15日に発表された。これはサリュコフ氏が、新たに任命されたアンドレイ・ベロウソフ国防相と共に、モスクワの赤の広場でロシアの年次「戦勝記念日」軍事パレードを視察してから1週間も経たないうちのことであった。

サリュコフ氏の突然の解任は、ロシア軍上層部における不安定さの高まりを浮き彫りにしている。

サリュコフ氏は2014年から同職に就いており、ロシアのシリアでの軍事作戦やその後のウクライナ侵攻において中心的な役割を果たしてきた。ウクライナ戦争は現在、勝利の見通しが立たないまま4年目に突入している。

2024年5月9日、モスクワ中心部の赤の広場で行われた戦勝記念日の軍事パレード後に、軍司令官らと挨拶を交わすロシアのプーチン大統領。この日、ロシアは第二次世界大戦におけるナチス・ドイツに対するソ連の勝利80周年を祝っていた。[Gavriil Grigorov/AFP]
2024年5月9日、モスクワ中心部の赤の広場で行われた戦勝記念日の軍事パレード後に、軍司令官らと挨拶を交わすロシアのプーチン大統領。この日、ロシアは第二次世界大戦におけるナチス・ドイツに対するソ連の勝利80周年を祝っていた。[Gavriil Grigorov/AFP]

サリュコフ氏は今後、元国防相セルゲイ・ショイグの副官に就任すると報じられている。ショイグ氏自身も2024年に閑職に追いやられ、安全保障会議書記に転任されたが、この人事は降格と広く受け止められている。

ロシア国営メディアの報道を引用して、ニュースサイト「Kyiv Independent」は5月16日、アンドレイ・モルドビチェフ大将がサリュコフ氏の後任になると報じた。モルドビチェフは、ロシア南部軍管区第8親衛諸兵科連合軍の司令官として、2022年のマリウポリ攻撃を指揮したという。

粛清の拡大か

サリュコフ氏の解任は、過去2年間にロシアの国防機関を席巻した一連の高官の解任や逮捕の最新の一例に過ぎない。

昨年以降、ティムール・イワノフ副国防相や複数の地方司令官を含む十数人の高官が汚職や権力乱用の容疑で起訴されている。

ロシアはこれらの動きが大規模な粛清の一環ではないと主張しているが、その傾向を見る限り、そうとは言い難い。

プーチンによって、以下を含む少なくとも12人の将軍軍幹部が堪忍または更迭されている。

  • セルゲイ・スロビキン将軍(別名「アルマゲドン将軍」):航空宇宙軍司令官解任
  • イーゴリ・オシポフ提督:巡洋艦モスクワの沈没を受けて解任
  • ドミトリー・ブルガコフ将軍(元副国防相):後方支援の失敗を理由に解任
  • イワン・ポポフ将軍:ウクライナ前線での問題について不満を訴えた後に解任、2024年4月に禁錮5年の判決

指導部の混乱

解任された幹部の多くは、防衛の主要プロジェクトに関連する汚職や資金横領の容疑に問われている。

ロシア軍の最高幹レベルでのこれらの交代は、戦争の遂行に対するクレムリン内部の深い不満をめぐる憶測を呼んでいる。

この幹部交代はまた、ロシア国防機構内で各派閥が影響力と資源を巡って争う内紛可能性を示唆している。

こうした頻繁な幹部の交代は、 ウクライナでの戦争が当初の予想をはるかに超えて長引いている中、クレムリンがスケープゴート(責任転嫁の対象)を探していることの表れだと、アナリストは指摘している。

ロシアは、軍事力で劣るウクライナをわずか3日で制圧する計画だったとされているが、 何千人もの死者を出す血みどろで消耗の激しい3年にわたる戦争で 身動きが取れなくなっている。

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