戦略的課題
兵力不足のロシア、拉致したウクライナ人の若者たちを戦場に送り込む=報道
2014年以降、ウクライナの占領下にある東部地域から推定3万5,000人の子どもが連れ去られられており、現在、戦場で10代の若者の遺体が発見されていると報じられている。
![空爆で破壊されたチェルニヒウ(ウクライナ)の自宅アパートの中庭を歩く10歳の少年の写真(日付不明)。[UNICEF]](/gc7/images/2025/07/30/51314-orphan-370_237.webp)
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ロンドンの『タイムズ紙』ニュースサイトの報道によると、ロシアは拉致したウクライナの子どもたちを、18歳になった際に自国との戦いに強制的に参加させているという。これは、 深刻化する兵力不足 に対処するためであり、同時にウクライナ国民に対する心理戦を仕掛ける狙いがあるとされている。
7月24日の報道では、2014年以降、ウクライナの占領下にある東部地域から推定3万5,000人の子どもが連れ去られ、その多くは、銃口を突きつけられて強制的に連行されたと、ウクライナ当局の発表を引用して指摘している。当局の主張によると、現在、こうした子どもの多くがロシア軍に徴兵され、前線に送り込まれており、友人や家族と戦う可能性もあるとされている。
タイムズの報道によると、正確な数は不明だが、推定では数千人が徴兵された可能性があるという。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の首席補佐官を務めるアンドリー・イェルマーク氏は、この件について、ウクライナは徴兵に関する文書を含む確固たる証拠を入手しているとタイムズのポッドキャストで述べている。
イェルマーク氏は、ウクライナ軍が戦場で10代の若者の遺体を発見していることを認めた。
「恐ろしいことだ」
「私たちはこの事実を確認した」と同氏はポッドキャストで述べている。「このことは、現在のロシア政権がテロリスト政権であることを認めるものだ。したがって、これは全世界にとっての非常に深刻な兆候だ」
ウクライナ当局者は、この措置には2つの目的があると述べている。1つは、ウクライナの発表によると、ロシア側の戦死者は約100万人に上るため、それによる ロシアの軍事人員の深刻な不足 を緩和すること、もう1つは、拉致されたウクライナ人の子供たちを自国と戦わせることで、ウクライナ人にトラウマを与えることだ。
「ロシア人はウクライナ人の次世代を滅ぼそうとしている」と、ある当局者はタイムズに語った。「彼らは、生まれ育った祖国と戦う新しい兵士を育成している。恐ろしいことだ」
タイムズによると、ロシアはクリミア併合とドンバス侵攻があった2014年から、ウクライナの子供たちを拉致し始めたという。当初は孤児院を標的にしていたとのことだ。この作戦は、2022年の全面侵攻後、さらに大規模に展開されている。報道によると、一部の子供たちはロシア人の家庭で引き取られているが、独立系研究者の推定では95%は「再教育」キャンプに送られているという。
その場所のウクライナ人の若者の多くは、10代後半になると、ロシア人によって、軍事訓練施設に連れて行かれると、タイムズは報じている。さらに、ウクライナ当局者の主張では、この計画はロシア連邦保安庁(FSB)が監督しているとのことだ。FSBが介入していることで、ウクライナの若者の拉致がクレムリンにとって重要であることが改めて浮き彫りになった。
国際刑事裁判所(ICC)は、この拉致事件を理由に、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と、同大統領の子どもの権利を担当する委員であるマリア・リヴォワ=ベロワ氏に対して逮捕状を発布した。
銃口を突きつけられての拉致
タイムズは、2022年に16歳でヘルソンから拉致された19歳のヴラド・ルデンコ氏にインタビューを行った。ルデンコ氏は母親のアパートに隠れていたところ、ロシア兵に銃口を突きつけられて連行されたという。その後、彼は、クリミアの再教育キャンプで18か月にわたって拘束された後、海軍兵学校に送られ、軍事訓練を受けた。
彼は2024年に母親によって海軍兵学校から救出された。
「私たちは毎朝、ロシア連邦国歌を歌うよう強制された」とルデンコ氏はタイムズに語った。「その後、ジャンプ、スクワット、ランニング、ほふく前進などの肉体的な訓練があり、射撃方法を学んだ。16歳と17歳の人にはダミーのライフルが渡され、それ以上の年齢の人は実弾を使用した」
「時間が経つにつれ、戦場に送り込まれるのではないかとますます不安に思うようになった」と彼は語った。「しかし、私はロシア人から奪われたものはなかった。ただ、私の子供時代を奪われただけだ。私は恵まれている。なぜなら、今、自国民と戦っているウクライナ人がいるからだ」